研究課題/領域番号 |
23K18808
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0107:経済学、経営学およびその関連分野
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
福田 皓 拓殖大学, 政経学部, 助教 (30983465)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 企業支援策 / 新型コロナ感染症 / ゾンビ企業 / 企業支援 / COVID-19 |
研究開始時の研究の概要 |
新型コロナウイルス感染症の拡大にともなって、政府による企業支援策は過去に類を見ない規模で実施されてきた。コロナの流行初期を対象とする多くの先行研究は、企業支援策は企業の雇用調整を短期的に抑制し、事業を継続させていたことを明らかにしている。しかし、過剰な企業支援は、コロナ後の業績回復が見込めないにもかかわらず、支援によって事業を継続している「ゾンビ企業」の温存につながりかねないという懸念がある。そこで本研究は、コロナ流行初期から同一企業を追跡したデータと応用ミクロ経済学の手法を用いて、企業支援策の申請がポストコロナ時代における企業の業績回復に繋がっていたかを検証し、企業支援のあり方を再考察する。
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研究実績の概要 |
本研究は、労働政策研究・研修機構(JILPT)と帝国データバンク(TDB)が共同で実施した「新型コロナウイルス感染症が企業経営に及ぼす影響に関する調査」から作成した約2年間の月次企業パネルデータを用いて、コロナ禍の雇用調整助成金が適切に申請され、受給企業の業績が中長期的に回復したかについて検証を行い、適切な支援策のあり方を解明する。 コロナ禍における雇用調整助成金と企業パフォーマンスに着目した研究は、コロナ流行初期を対象としたものが多く(Kawaguchi et al. (2021)、Honda et al. (2022) 、Hoshi et al. (2023))、支援策を受けた企業がコロナ収束後も業績を回復させたかについて、政策評価はいまだ十分に行われていないのが実情である。これに対して、本研究ではコロナ流行開始から約4000社を2年間にわたって追跡した詳細な企業パネル調査を用いて、コロナ流行初期に実施された雇用調整助成金とその後の企業パフォーマンスの関係を明らかにする点で大きな新規性がある。また、1990年代の「失われた10年」やその後の2000年代を含む「失われた20年」を対象としたゾンビ企業に関する研究(Caballero et al. (2008)、Fukuda (2011)など)にも深く関連する。 既存研究では、助成金は事業継続や雇用維持を短期的に後押しする効果が見られていた。これに対して本研究では、月次レベルの中長期的なデータと応用計量経済学の手法(傾向スコアマッチング)によって分析した結果、申請企業のパフォーマンスはコロナ以前の水準まで十分に回復していないことが明らかになった。これらの内容を踏まえて論文を執筆し、現在、査読付き英文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、事前と事後の両面から見た企業業績に着目し、雇用調整助成金が適切に申請されたかについて検証を行っている。事前の意味では、コロナ以前から業績が悪いゾンビ企業からの申請は観察されず、流行開始からの業績悪化が事前の申請要因であることが明らかになった。一方で、コロナ初期の申請後から1年以上経過した後であっても、申請企業の業績は非申請企業の水準まで回復せず、持続的な負の影響が明らかになった。さらに、その特徴は、従業員数が1000人未満の中小規模の企業や、コロナの影響を強く受けた、飲食宿泊業や生活関連サービス業、娯楽業において顕著にみられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の初期分析は、2021年4月に慶應義塾大学商学部山本勲教授との共同研究として参加したJILPTのプロジェクトの一部であり、その成果は2021年11月に書籍の1つの章「コロナ流行初期の企業支援策と中期的な企業パフォーマンス」として出版された。また、その後、申請者が単独でコロナ流行初期のデータを用いたパネル分析を行った成果は、Applied Economic Lettersに刊行された。今後は、企業データのアップデートと整備を行い、追加の分析をすすめる予定である。
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