研究課題/領域番号 |
23K18829
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塚田 祐介 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (30980338)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 健康格差 / 従業上の地位 / ライフコース / 社会階層 / 労働市場 / 社会学 |
研究開始時の研究の概要 |
日本における従業上の地位と健康の関連に関する研究は十分に蓄積されておらず、詳細なメカニズムが明らかになっていない。とりわけ、ライフコース・アプローチの視点が欠けており、多くの研究がクロスセクショナル・データを用いているという限界がある。そのため、本研究はパネル調査データを用いて縦断的問いに基づいて分析をすることにより、横断的分析には捉えられない経時的変化のプロセスなどを明らかにする。そして、健康格差という視点を取り入れることで、非正規労働者に対する有効な社会政策や包括的な支援策を提示していくための全体像の把握や改善のための知見を提示する。
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研究実績の概要 |
本研究は、社会階層論の文脈において、従業上の地位が個人の健康に影響を及ぼし、健康格差が生じるメカニズムについて、ライフコースの理論的枠組みとパネル調査データを用いて社会学的に分析することを目的としている。2023年度(2023年9月から2024年3月まで)は以下の研究活動を実施した。 まず、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS)」や「全国就業実態パネル調査」などのデータ利用申請を行い、二次分析に必要な量的データを入手した。これらのデータは、個人の職業経歴や健康状態に関する情報を含んでおり、本研究の目的に合致したものである。 次に、ライフコースアプローチを採用し、ライフステージの違いに着目した二次分析を行った。その結果、従業上の地位と健康の関連性がライフステージによって異なることが示唆された。この知見は、ライフステージによって健康の社会的決定要因が異なる可能性を示唆するものであり、社会階層と健康格差の関係をライフコースの視点から捉える上で重要な示唆を与えるものである。本研究成果は、夏季に開催予定のアメリカ社会学会において発表を行う計画である。 さらに、従業上の地位の影響を「時間の経過」の視点から捉えるため、曝露期間(duration)に着目した分析を実施した。不安定な従業上の地位を経験する期間の長さに応じて、健康状態がどのように変化するのかを検討したところ、不安定な地位に長期間(longer duration)曝露されることで、健康への悪影響がより強く現れることが明らかになった。この結果は、不安定な従業上の地位が健康に与える影響が蓄積的であることを示唆しており、社会階層と健康格差の関係を時間的な側面から捉える上で重要な知見であると考えられる。本研究成果は、今後学会報告や論文投稿を通じて公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の現在までの進捗状況について、以下の区分により自己点検による評価を行った結果、「おおむね順調に進展している」と判断した。 当初の計画では、初年度である2023年度は、主要な二次分析用データの利用申請とデータ入手、ライフコースアプローチを用いた分析に着手し始める予定であった。実際には、「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS)」と「全国就業実態パネル調査」のデータ利用申請を行い、必要なデータを入手することができた。また、ライフステージや曝露期間の違いに着目した分析を行い、従業上の地位と健康の関連性に関する新たな知見を得ることができた。 これらの研究成果は、夏季に開催予定の学会での発表や、今後の学会報告・論文執筆につなげる予定であり、研究の進捗状況はおおむね順調であると評価できる。一方で、他の社会調査データの利用申請については、まだ実施できていない部分もあるため、引き続き計画的に進めていく必要がある。 以上のように、2023年度に予定していた研究活動を概ね実施することができ、新たな知見も得られたことから、現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の目的を達成するため、今後は以下の方策で研究を推進していく。 - 追加データの利用申請と分析 2023年度に利用申請を行った「働き方とライフスタイルの変化に関する全国調査(JLPS)」と「全国就業実態パネル調査」に加え、他の社会調査データについても利用申請を行う。これらの多様なデータを用いることで、従業上の地位と健康の関連性について、より多角的かつ精緻な分析が可能となる。 - ライフコースアプローチによる分析の深化 ライフステージや曝露期間の違いに着目した分析に加え、2024年度はhealth trajectoryに関する分析を行う。個人の健康状態の変化を追跡的に捉え、従業上の地位がその軌跡にどのような影響を与えるのかを明らかにする。この分析により、従業上の地位と健康の関連性について、より動的な理解が得られると期待される。分析結果は、研究発表や論文投稿を通じて公表する。 以上の方策を着実に実行することで、本研究課題の目的を達成し、社会階層と健康格差の関係について新たな知見を提供するとともに、健康格差の解消に向けた社会的な取り組みに寄与することを目指す。
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