研究課題/領域番号 |
23K18841
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
中川 雄大 國學院大學, 観光まちづくり学部, 助手 (30980247)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | コンクリート / 物質性 / 建築史 / 社会史 / 都市研究 / 採掘 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、日本の高度経済成長期において都市化がいかなる形で進められたのかを、コンクリートという物質への着目から明らかにすることである。 本研究は都市化を物質性の観点から捉えることで、都市内部における建設がいかなる技術によって可能となったのか、都市化はいかにして資源を都市外部から収奪しつつ成立してきたのかという論点を検討する。 具体的には、コンクリートの主たる消費地たる東京と、東京へ原料を提供した石灰石の生産地たる埼玉県秩父市や山口県美祢市等を中心的なフィールドと位置づけ、コンクリートの採掘と普及という 2 つの側面に着目し、物質循環のなかで都市化が進められていく様子を描き出す。
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研究実績の概要 |
今年度の研究実績は、事例研究と理論研究の二点に大別することができる。 事例研究については、コンクリート建築の普及過程に焦点を絞り、なかでも戦後日本社会において官民一体となって導入が進められたコンクリートブロック建築(ブロック建築)について国立国会図書館、東京都立中央図書館、神奈川県立川崎図書館等において重点的に資料調査を行なった。 人が積むことができる大きさに加工されたブロックは、グローバルサウスにおいてはセルフビルドの建材として使用される側面に注目が集まっているが、日本社会においては耐震性・耐火性が重視されたことに加え、資源合理化という観点から国家主導によって導入が推進された点に特徴がある。しかしながら、1950年代のブロック建築は、ブロック自体の品質と施工の質に難を抱えていた。このようなブロックが抱えるさまざまな脆弱性を、メーカー、専門家集団、施主がいかに制御したのかについて、コンクリートブロックに関する機関誌から分析を進めている。この研究成果については、複数回研究報告を行い、論文化への作業を進めている。 理論研究については、都市の物質性とインフラの関係に関する先行研究を検討し、本研究の理論的枠組みを構築する作業を進めている。なかでも物質性とインターセクショナリティの関わりを都市研究において検討していくために、フェミニズム政治生態学の理論的検討を行い、日本の都市社会学との接点を探った。この点をまとめ、学会発表を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はモノと技術、人の関わりを検討する上でコンクリートブロックが格好の分析対象と考えられたことから、資料を収集し、論文化の作業を進めた。この作業が比較的順調に進行している。加えて、本研究対象から派生的に地方におけるコンクリート建築やインフラの普及過程の検討課題も提起され、本研究課題の枠組みを広げていくことが可能であることから、研究上の進捗が生じていると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
まず、2024年度においてはこれまでのコンクリートブロック論について学会発表を行い、論文化していくことを目指している。加えて、現段階での研究はおおむね東京を中心とした都市部を対象としているが、今後研究をより発展させていくためには、異なる地域における普及過程を分析していく必要がある。たとえば、日本国内においても北海道においては耐寒性が、沖縄においては台風に対する耐久性が求められたことから、ブロック建築は異なる普及の過程をたどることになった。 以上より、今後は日本の周縁部におけるブロック建築の普及過程の分析を通じて、戦後日本社会の枠組みを建築の物質性に着目する観点から再検討する作業を進めていきたい。この作業のために、北海道や沖縄等における資料調査を継続的に実施していく予定である。
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