研究課題/領域番号 |
23K18842
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0108:社会学およびその関連分野
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
藤田 研二郎 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (60802105)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 環境NGO・NPO / 経済的機会構造 / 団体の成長 / ミッション・ドリフト / 二次分析 |
研究開始時の研究の概要 |
環境NGO・NPOの注目から四半世紀以上を経た今日、活動の停滞が顕著になりつつある状況を踏まえて、本研究では「環境NGO・NPOの活動は政策的にも促進されてきたにもかかわらず、団体が十分に成長できていないとすれば、なぜか」という問いを探究する。 上記の問いに対して本研究では、行政の委託事業や活動助成のあり方など、団体の置かれた経済的条件を、「経済的機会構造」として検討対象とする。そして、経済的機会構造が団体の成長(安定的な収入源の確保や専従職員の雇用)に与える影響を比較・考察する。以上を通じて、既存の社会運動研究やNPO研究、環境NGO・NPOの活動促進に関する施策に、新たな論点を提起する。
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研究実績の概要 |
2023年度は、①NGO・NPOの経済的機会構造に関する先行研究のレビュー、②環境再生保全機構『環境NGO・NPO総覧』のデータの予備的分析を行い、また③内閣府「特定非営利活動法人に関する実態調査」のデータの統計的分析に着手した。 ①については、社会運動論における資源動員論や「社会運動の制度化」に関する議論、NPO論における「行政の下請け化」や「ミッション・ドリフト」の議論、NPOの収入構造に関する分析などの先行研究をレビューした。本研究課題の経済的機会構造に関して、社会運動論では運動の経済的条件について言及されてきたものの、それに焦点を合わせた本格的な検討はなされていないこと、対してNPO論では、環境分野に注目したものではないものの、NPOの経済的条件とその影響に関する論点が提起されており、環境NGO・NPOに焦点を絞ってこれらの論点を検討する余地があることを確認した。 ②については、本研究課題の予備的な検討として、インターネット上で公開されている環境再生保全機構の『環境NGO・NPO総覧』のデータを収集し、とくに年間予算規模と職員数に着目した分析を行った。分析の結果、環境の下位の活動分野によって団体の予算規模が異なること、また大半の団体は有給職員を有さず、ボランティアに支えられていることなどが明らかになった。なお、①②の結果を論文にまとめ、法政大学人間環境学会の『人間環境論集』に掲載した。 ③については、内閣府の担当課と調整しながら、2013年度、2020年度「特定非営利活動法人に関する実態調査」のデータの二次利用申請を行った。これらのデータは2024年1月に受領し、データクリーニング、両年度調査データの接続などの処理を行ったうえで、クラスター分析などの統計的分析に着手した。今後は代表的な団体への聞き取り調査と並行して、分析を深める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の本研究課題の進捗状況について、まずNGO・NPOの経済的機会構造に関する先行研究のレビューは、当初の計画通りに進展した。国内における社会運動論、NPO論の関連する研究については、おおよそレビューが完了したほか、国外の研究についても検討を進めることができた。 次に、環境再生保全機構の『環境NGO・NPO総覧』のデータについて、当初の計画では、既存の調査データの二次分析や代表的な団体への聞き取り調査の参考資料とするという程度の想定であったが、より詳細な検討を行うこととし、インターネット上で公開されているすべての団体のデータを収集、分析した。分析の結果、環境の下位の活動分野によって団体の予算規模が異なることなどが明らかになった。これらの知見は、今後研究計画上の二次分析や聞き取り調査を行うにあたっても、重要な着眼点になるとみられ、当初の想定以上の成果を得ることができた。 また、内閣府の「特定非営利活動法人に関する実態調査」のデータの二次利用申請、統計的分析については、当初の計画通りに進展した。3か月程度でデータの二次利用申請を完了し、2024年1月にデータを受領、データクリーニング、両年度調査データの接続などの処理を行った。これによって、今後統計的分析を行うための基盤を整備することができ、またクラスター分析などの分析にも着手した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画上の既存の調査データの二次分析を進めるとともに、代表的な団体への聞き取り調査を実施する。 まず既存の調査データの二次分析については、2023年度にデータを受領し、統計的分析を行うための基盤を整備した、内閣府「特定非営利活動法人に関する実態調査」のデータについて、本格的な分析を行う。また団体のホームページ、内閣府「NPO法人ポータルサイト」に掲載されている事業報告書、行政の委託事業に関する契約締結情報などから、代表的な環境NGO・NPOを選定したうえで、聞き取り調査を行う。 上記の調査・分析にあたって、2023年度に実施した環境再生保全機構『環境NGO・NPO総覧』のデータの予備的分析の結果は、重要な着眼点となる。予備的分析では、環境の下位の活動分野によって団体の予算規模が異なる、具体的にはリサイクル・廃棄物対策に関する団体は予算規模が大きいのに対して、動植物の保護に関する団体は規模が小さいことが示唆されたが、より一般的なデータでも同様のことがいえるか。また、大半の団体は有給職員を有さず、ボランティアに支えられていることが明らかになったが、収入構造についてより詳細なデータを分析することで、どのような団体がボランティア依存の状況から脱却することができるか、そうした団体の成長に経済的機会構造がどのような影響を与えているか、などを明らかにすることが見込まれる。 なお、本研究課題は今後、新たに採択された2024~2028年度の若手研究の研究課題のもとでの総合的な研究の一部として、引き続き実施していくことになる。
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