研究課題/領域番号 |
23K18879
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
豊田 英嗣 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (90979014)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 障害児教育史 / 病気療養児 / イングランド研究 / イギリス / 病弱教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、1950-60年代イングランドにて医療専門家と病気療養児を持つ親が子どものウェルフェアと教育をどのように認識し、いかなる病気療養児教育像を有していたかを解明することである。本研究は主に2つの研究から構成される。研究1では、医療専門家が病気療養児のウェルフェアを推進するための総合的アプローチの方針を策定する中で、教育活動がどのように位置付けられたかを明らかにする。研究2では、病気療養児の親が医療専門家によって策定された方針をどのように受容し、いかなる反応を示したかについて、その過程を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、病気療養児への教育サービスの在り方が教育・医学領域から提示されるようになった20世紀中葉イングランドでの議論を対象とし、病気療養児に関連する多様なステークホルダーが提示する病気療養児教育像の特質を解明し、それらの類似点と相違点を明らかにすることである。研究フェーズの第一期となる2023年度は、イングランド省庁(教育省・保健省)や省庁に大きく影響を与えたと考えられる諮問委員会、並びに研究者の動向を分析した。分析の結果、障害児教育改革の文脈の中で「入院している子ども」を捉えた教育省が、入院による教育機会の断絶が子どものその後の教育的及び職業的キャリアに与えうる損失を危惧していた。それに対し、病気療養児のウェルフェアを重視する医学を専門領域に持つ研究者と保健省の関心は、入院によって生じる子どもへの心理的影響をいかにして最小化させるか、という点であった。それ故に、病気療養児の暇な時間をなくし、入院中の心理的ストレスを最小化させるための一つの手段として教育の必要性を認識していたことが明らかになった。この研究結果は、日英教育学会第32回年次大会(2023年8月28-29日開催)にて発表された。 研究フェーズの第二期となる2024年度は、教育省と保健省及び医学系研究者による病気療養児教育像の認識の相違点がその後の展開、とりわけ1960-80年代にて病気療養児の入院環境改善に大きく貢献したとされるボランタリー組織MCCHの活動にいかなる影響を与えたかについて考察することを試みる。上記の分析を進めるため、2024年3月には渡英し、現地の図書館・アーカイブセンターにて当該組織の活動内容や問題意識について記された資料収集活動を実施した。2024年4月時点では、収集した資料の読解と整理を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、イングランド教育省と保健省から発行された1950年代の文献資料を分析対象とし、それぞれが掲げた病気療養児教育観について明らかにした。教育省に関しては、当時の障害児教育改革の方針を示す政策文書、学齢期の子どもの保健に関する報告書、病気療養児教育に特化したガイドラインに力点を置きつつ、障害児教育改革の文脈の中で病気療養児教育がどのように認識されていたのかを明らかにした。保健省に関しては、諮問委員会や同委員会に深く関係した医学系研究者の動向を含めた分析・検討を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、2023年度末に採集した資料の整理と分析を継続して行い、1960年代以降のボランタリー組織MCCH(後にNAWCH、ASCへと改組される)の活動にみえる病気療養児教育の位置付けについて分析・検討を行う。とりわけ、本研究のテーマとなる、1950年代における教育省と保健省の病気療養児教育観の類似点・相違点と、その後のMCCHの活動との関連を明らかにすることを試みたい。
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