研究課題/領域番号 |
23K18904
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
|
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
石川 雅章 愛知教育大学, 教育学部, 助教 (50983152)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 国語的読み / 数学的読み / 可能世界意味論 / 認知言語学 / 読解力 / 文章題 / 数学的モデル化 / 言語学 / 論理学 |
研究開始時の研究の概要 |
大学入学共通テストにおける数学の問題について,純粋な数学力に加えて読解力を要するものまで含まれ始めていることからも分かる通り,数学学習における言語能力の重要性はこれまで以上に増してきたといえる。本研究は,こうした背景を踏まえながら,従来の数学教育学研究では焦点を当てづらかった日本語(自然言語)を用いて数学を学習することの難しさを捉えようとするものである。特に,認知言語学の知見を積極的に援用することで,従来の数学教育学研究の方法論を拡張しようとする点に特徴がある。本研究の進展によって,数学学習における言語的側面に起因する問題点の解明のみならず,数学教育学研究の可能性を広げることを目指している。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は「日本語(自然言語体系)と数学言語(数字や「=」など数学に固有な記号表現を用いて展開される言語体系)の構造差が事象の数学化に及ぼす影響を理論的・実証的に明らかにすること」である。 目的の達成に向け,令和5年度は「理論的アプローチ」,令和6年度は「実証的アプローチ」を中心として研究を遂行予定であった。令和5年度には,日本語と数学言語の関係を捉えるための記述的枠組みを構築しつつ,過去の実証データをもとに,その枠組みの妥当性を検証する活動を行うことができた。その意味では,完全に「理論的アプローチ」に傾倒していたというわけではない。現時点での研究の成果は,以下の通りである。 「否定」という思考に関する日常言語と数学言語の運用方法の違いに関するこれまでの取り組みを精緻化し,論文として投稿した。この論文では,日常的な思考が数学学習においてメリットにもデメリットにもなりうることを理論的・実証的に検証している。この取り組みに時間を要したことで,当初予定していた「中学校数学科4領域における日常言語と数学言語の関係」を完全に遂行することはできていない。実施できたのは「数と式」と「関数」の2領域である。 まず,「数と式」について「読解力」の視点から分析を行った。特に,「一次方程式」の読解場面において「国語的に読む」という行為と「数学的に読む」という行為が,どのように関わり合っているのかについて理論的に考察し,仮想的な学習者を想定しながら枠組みの記述性について検討した。その成果は論文として投稿中である。 次に,「関数」について「時制」の視点から分析を行った。正確には,まだ構想段階であるが「日本語と違って数学は時制の概念が捨象されやすいのではないか?」という作業仮説に基づきながら研究を進めている。6月を目処に理論的に精緻化し,学会等で成果を公表予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要に記載の通り,「否定」に関する論考の成果を取りまとめるのに苦戦し,研究の進行が少しずつ後ろ倒しになったことで,中学校数学科の4領域すべての内容について分析を行うことができなかった。また,論文としてまとめたものが査読付き学術誌として年度内にパブリッシュされなかったことで,論文内で作成した理論的枠組みを用いた調査の見通しが現時点では立っていない。以上の理由から,「やや遅れている」と評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
現時点で構想段階にある「時制概念」の日本語と数学言語の相違について,詳細に分析し,学会発表・論文投稿を行う予定である(「関数」領域)。「数と式」領域の問題として「一次方程式」における言語的問題も実証データに基づいた分析を実施し,学会発表・論文投稿の予定である。
|