研究課題/領域番号 |
23K18916
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
石山 ひかる 上智大学, アメリカ・カナダ研究所, 研究員 (80982777)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 英語教育史 / ミッション・スクール / 女性史 / アメリカ系宣教師 / キリスト教 |
研究開始時の研究の概要 |
明治期から大正期にかけて来日したアメリカ系プロテスタント宣教師らは、宣教活動の一環として、全国各地に女子のための教育機関を設立した。官公立の女子教育機関が未だ十分に整備されない中でのこれらの学校は、知的探究心の強い女子学生や、良い教育を授けたいと願う士族の子女らを受け入れる機関として機能した。本研究では、近代的女子教育の原形であるこれらの学校で、歴史的にどのような英語教育が行われてきたのか、また、英語を学ぶ女子学生らの目的や意識はどのようなものだったかを一次資料を用いて調査する。宣教師の歴史と女性史の観点を用いた学際的な研究手法によって、日本の英語教育史の複層的な全体像を明らかにしたい。
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研究実績の概要 |
本研究では、「女子ミッション・スクールにおける英語教育」をテーマとし、キリスト教宣教師・女性史・英語教育の三つのキーワードをもとに資料蒐集と調査を進めている。 本研究で目指していることは、以下の二つである。1)明治期に創設された女子ミッション・スクールにおける英語教育の授業内容やカリキュラム等に関する歴史資料を蒐集し、英語教育の歴史的展開を明らかにする。2)女性宣教師らのもとで英語を習得した女子生徒らの卒業後の進路に関する資料を蒐集し、女子ミッション・スクールでの英語教育が女子生徒に与えた影響を考察する。研究資料として、各学校の年史に加え、英語教材や生徒のノート、書簡、宣教師の年報を用いる。 従来の英語教育史分野では、幕末・明治期以降に英語学者らが提唱した英語教授法や官公立の学校で使用された教科書、英語学者らの個人史が主に研究されてきた。それらの研究対象は中学校及び高等女学校が主であり、宣教師設立の女学校は着目されてこなかった。 この研究傾向は、戦前において英語は主に中学校(男生徒のみ)の教科であり、当時の英語教授法や英語教育論は男生徒が対象となっていたことと関係があるといえる。もっとも、女子生徒への英語教育に関して、東京師範学校で教鞭を取った岡田美津が『女子英語教育論』(1936年)で論じている。しかし岡田も、女子ミッション・スクールの英語教育への言及は限定的である。 本研究では、従来の研究では注目されてこなかったミッション・スクールの女子生徒らがどのような英語教育を受け、それが彼女らの卒業後の進路(職業選択や家庭生活)にどのようにいかされていったかを調査する。女子ミッション・スクールにおける英語教育の実践史を明らかにし、それを女性史と宣教師史との関連から考察したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始後およそ半年間での進捗状況は、概ね順調である。 まず、明治大正期に創立された女子ミッション・スクール46校の各学校の英語教育の授業時間と授業内容の概要をまとめ、一覧を作成した。その際に使用した資料は主に、各学校の年史とキリスト教学校教育連盟が編纂した資料である。その後、それらを同時代の男子の中学校や官公立の高等女学校の英語教育と比較した。その結果、1900年前後の英語授業時間数を確認することできた計19校の女子ミッション・スクールのうち、中学校以上に英語授業時間があった学校は4校であり、高等女学校以上に英語授業時間があったのは19校全てであった。これにより、これまでの「女子ミッション・スクール=英語教育重視」という曖昧な印象を客観的資料によって裏付けることができた。 さらに、各学校内での英語教育の歴史的変遷を明らかにするため、女子ミッション・スクールの最初の学校であるフェリス女学校の英語教育に着目し、1882年から1927年までの教授内容とカリキュラム、そして担当教員の変遷を調査した。用いた主な資料は、フェリス女学院の150年史資料集である。フェリスの英語教育は、英学というリベラル・アーツ教育から、言語としての英語を教える語学科目として展開した。これは、出来訓成の『日本英語教育史考』(1994年)における指摘と重なる。また、欧化時代から国粋主義時代へと移り変わる中で教授内容に変化があるが、一貫して「翻訳」が重視されていたことも明らかになった。 現在までの調査で、英語教育の歴史的変遷の全体像を明らかにした。今後は、実際に使用された教科書や生徒のノート、生徒の書簡等の資料を用いて、英語教育の実践史をより詳細にみていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、引き続きフェリス女学校の英語教育の調査を進め、在籍した生徒のノートや教科書、書簡等、生徒側の資料を用いて、英語教育の実践史をより詳細にみていきたい。また、『小公子』を翻訳した若松賤子を始めとする、日本社会に大きな功績を残した女子学生に着目する。彼女らが受けた英語教育が、卒業後の進路や家庭の築き方にどのように繋がっているのかを考察したい。
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