研究課題/領域番号 |
23K18943
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0109:教育学およびその関連分野
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
加藤 隆芳 香川大学, 教育学部, 准教授 (20891550)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 特別支援教育 / 肢体不自由教育 / キャリア教育 / 進路指導 / 就労支援 / テレワーク |
研究開始時の研究の概要 |
重度肢体不自由児・者においては、身体の動きの困難やそれに伴う介助が常時必要であるため、就労困難にある者が少なくない。また、就労阻害の背景には運動障害とともに、脳損傷等が起因する認知の偏り等による自己理解・自己省察、基礎学力の習得の課題もあげられる。そのため、重度肢体不自由の障害特性を踏まえたキャリア教育プログラムの検討が急がれる。 そこで、特別支援教育が培ってきた学校現場・労働現場双方の知見を踏まえた教育体制であるデュアルシステムを基に、その重度肢体不自由版の開発を目指すための基本となる指導内容の検討を、肢体不自由児を指導する教員、肢体不自由者の雇用主や就労支援者との協働により実施する。
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研究実績の概要 |
日常生活において排泄や食事の介助を必要とする重度肢体不自由児が、企業、官公庁、自営等による就労を通じた社会参加が困難であることの背景を明らかにし、その上で関係機関が連携したキャリア教育についての検討を行っている。そこで、介助を要する肢体不自由者をテレワークによる雇用を実践する企業に所属する肢体不自由者の社員を対象に、業務上の困難・業務遂行に向けた工夫、特別支援学校在学中に学ぶ必要がある事項を抽出する質問紙調査をwebによって行った。また、介助を要する肢体不自由児を教育する特別支援学校教員を対象に、児童生徒のキャリア発達を促す指導における課題・指導の重点と考える事項の抽出を目的とした質問紙調査をwebによって行った。 テレワークを行う肢体不自由者の社員は、「介助者確保」「生活と仕事が同一環境であることへの切り替え」等の健康管理と介助環境の構築が、在宅であっても困難点として存在することを示し、家族への介助支援、休日のリハビリテーションの積極的利用、業務遂行に適した機材の選定等を工夫点としてあげた。また、テレワークは他者との対話やコミュニケーションの自己解決が必須のため、在学中には国語力・表現力等を国語科等を中心に時間を割いて指導する必要性を示した。 特別支援学校教員が捉える指導の重点として、障害理解を土台とした自己理解・自己管理への気づきを促すことがあげられ、自立活動の指導において「健康の保持」「身体の動き」に関する指導に重きを置いていることが予測された。指導上の課題として、自己理解を基盤に自分自身で将来像を描き、行動することができる思考力・行動力の育成をどのように行うべきか検討を要するという認識が推測された。また、指導に際して、卒業した後の社会参加の環境の具体について教員が十分に把握していない側面があり、進路指導を行う上での教員研修等に関する課題意識も確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年次は、常時介助を必要とする重度肢体不自由児・者が、就労による社会参加が困難であることの背景を探るための質問紙調査を当該の肢体不自由者を雇用する企業、並びに、特別支援学校を対象に実施することを計画・実施した。また、それらの結果についても分析を計画・実施することができた。なお、調査に関しては、企業及び学校のいずれにおいても複数の機関・団体への実施を予定していたが、調査対象の該当者が在籍しない等の理由により、企業及び学校はいずれも1機関ずつを対象に調査を実施した。そのため、調査を実施しない機関・団体に対しては、肢体不自由者の業務に関する指導者、進路指導担当教員への面接による聞き取りや協議を行うことで、調査結果の共有と課題、並びに、求められるキャリア教育の方法についての見解を収集することを行ることができた。 また、2年次に実施するキャリア教育プログラムの検討に際しては、企業によるテレワーク形式の職業体験を軸に内容の構築を実施するが、重度肢体不自由児が職業体験を行うための作業環境を検討するとともに、取り組みの成果・課題を検討するために事業所以外となる香川大学、並びに、職業体験を行う特別支援学校において、守秘義務等の情報管理の在り方について検討することを念頭に置いた機器設定についても検討している。そのため、実際に職業体験を行う重度肢体不自由児が使用する機材の準備・設置の基本的な事項を1年次において行うことができたことから、研究者・学校・企業における協議を進めながら具体的に3者において作業を進められる環境にある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、質問紙調査結果を基に、重度肢体不自由者を雇用する企業、障害者の支援・雇用関連業者、特別支援学校(肢体不自由)における研究協力者との協議結果を基に、介助を要する重度肢体不自由児が、就労を通じた社会参加を実現するために求められるキャリア教育の在り方と具体的なプログラムについて検討を実施する。 そのため、指導方略立案については、「企業における重度肢体不自由児・者に対する職業体験の方針と具体的な指導内容の立案」「特別支援学校(肢体不自由)における自立活動や教科横断的な指導に係り、就労実現に必要なキャリア教育の方針と具体的な指導目標及び指導内容の検討」へ着目する。これにより、学校と企業、学校と医療・福祉等が相互に連携することに重きを置いたキャリア教育プログラムを検討し、特別支援学校(肢体不自由)の教育課程の編成の検討に寄与したい。 また、研究の過程について、日本特殊教育学会等における研究発表を通じ、特別支援学校(肢体不自由)関係者へ報告し、本研究の成果や課題について意見交換を重ねることにより、キャリア教育プログラムの構築に向けた知見の集積を図りたい。
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