研究課題/領域番号 |
23K18977
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田岡 大樹 京都大学, 人と社会の未来研究院, 特定研究員 (00981309)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 無謀な賭け / 強化学習 / 計算論モデリング / シミュレーション / ギャンブル行動 |
研究開始時の研究の概要 |
国内でカジノを中心とした統合型リゾート (IR) の推進・整備が進む中,ギャンブル依存 症の予防策の実効性は疑問視されている。効果的な予防を実現するためには,損失の蓄積を招くような非合理的な賭け行動に対する予測と介入が有効であると考える。本研究では,ギャンブル中の非合理的な賭け行動を説明・予測する数理モデルを構築することを目指す。具体的には,勝率が低いギャンブルに多額を賭けてしまう行動である無謀な賭けに着目し,強化学習モデリングの手法を用いた説明・予測を試みる。数値シミュレーション,行動実験データへの当てはめ,将来の行動予測等を通じて,構築した数理モデルの妥当性,予測性能,応用可能性を評価する。
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研究実績の概要 |
無謀な賭けに関する先行研究 (Cummins et al., 2009) では、Acey-Deucey Taskにおいて事前に多くの勝ちを経験すると、その後に無謀な賭けが促進されることが報告されている。しかしながら、その背後にあるメカニズムは明らかにされていない。 2023年度の研究では、この現象を事前の勝敗経験に基づいてギャンブルの勝敗を予測するプロセスと、期待複利効果 (何倍にチップを増やすことができるか) の最大化を目的として賭け方策を学習するプロセスとして数理モデル化し、計算論的説明を試みた。 先行研究と同様の実験課題状況をコンピュータ上でシミュレーションし、構築したモデルを用いて人工データを生成したところ、多くの勝ちを経験することでリスク志向的な方策が、多くの負けを経験することでリスク回避的な方策がそれぞれ学習された。この結果から、本研究の提案モデルによって先行研究の知見を再現、説明することが可能であることが示唆される。具体的には、ギャンブルの勝敗を予測する際に自身の勝敗経験に依存する程度が高い場合には学習により獲得される方策にバイアスが生じ、その結果無謀な賭けが生じやすくなる (あるいは生じにくくなる) という説明が導かれる。 さらに、モデルパラメータを様々に変えて生成した人工データに対してモデルを当てはめたところ、学習率以外のパラメータについて概ね良好なパラメータリカバリー性能 (データ生成時のパラメータを精度良く推定できる程度) が確認された。この結果から、行動データから個人差を表現するパラメータを推定可能であることが示唆される。 研究代表者は、本研究成果の一部を日本認知心理学会第21回大会をはじめとする国内の学術集会にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は、数理モデルの構築とパラメータリカバリー性能の向上に当初計画していた以上に時間を要した。本年度後半に実施予定であった行動データの収集と当てはめは次年度に繰り越すこととなった。しかし、次に控える行動データへの当てはめや予測性能の評価に使用するプログラムはこれまでの研究で作成したものを再利用することが可能であり、比較的速やかに実施可能である。これらの点を総合的に判断し、本研究はおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には、ギャンブル課題を用いた行動実験を通じて賭け行動のデータを収集し、行動データに対する提案モデルの当てはめを行う。必要に応じて、提案モデルの一部を変更した候補モデルを事前にいくつか作成し、実際の行動データへの当てはまりの良さ等の観点からモデル比較・選択を行い、より良いモデルへと修正を行う。 さらに、個人の賭け行動のデータを途中で折半し、前半のデータから推定されたモデルパラメータと提案モデルに基づいて、後半のデータをどの程度予測できるか評価する。 これらを通じて、提案モデルによる無謀な賭けの説明・予測の可能性について検討を進める。
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