研究課題/領域番号 |
23K18985
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0110:心理学およびその関連分野
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
蒲原 千尋 順天堂大学, 大学院医学研究科, 博士研究員 (40983937)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 認知機能検査 / 特発性正常圧水頭症 / アプリケーションソフト / 神経心理検査 / 認知機能評価 / ストループテスト / アプリケーションソフトウェア |
研究開始時の研究の概要 |
社会の高齢化とともに自身の認知機能に不安を持つ高齢者は増加し、病院の臨床現場において神経心理検査の実施は必要不可欠となっている。一方、実際に病院にて診療報酬の低い心理検査を実施する神経心理士の雇用は限られ、検査を行える施設が少ない現状がある。認知機能低下が伴う疾患の中に、特発性正常圧水頭症(iNPH)があり、脳脊髄液シャント手術によって症状の改善が期待される。本研究ではiNPH患者の診断的認知機能評価をより簡便に、短時間で実施できるアプリケーションを開発し、従来の検査方法と同等の診断精度があることを明らかにする。本研究結果は、診療現場の神経心理士の人材不足を補い、日本でのiNPHの治療レベル向上に寄与する。
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研究実績の概要 |
社会の高齢化に伴い、認知症に関する疾患が増加し、病院の臨床現場においては鑑別診断として、認知機能検査が重要である。しかし、神経心理検査の診療報酬は低く、雇用される神経心理士は限定された病院のみのため、ほとんどの施設で欠乏している。現状の問題点に対し、実施が簡便なうえ必要な検査時間が短く、かつ神経心理士が不在でも実施できる認知機能検査の実施が必要とされる。 特発性正常圧水頭症(iNPH)は、適切な診断に基づき治療が可能な認知症疾患の一つであり、わが国では37万人以上、認知症患者の約5%を占める患者が存在すると考えられる。iNPHの鑑別診断に必要な検査であるヨーロッパで広く用いられている認知機能スケール(EU-iNPHスケール)は、日本では限られた施設しか有しておらず、この方法を代替する標準的な実施方法は確立されていない。そこで、申請者は、高額な心理検査機材を代替する安価で簡便、かつ精度の高いスマートフォン用アプリケーション(アプリ)を開発することを立案した。 EU-iNPHに含まれる神経心理検査の中で、ストループテストは簡易アプリを作成しており、従来の検査と比較した結果、相関性を確認し、アプリは従来の検査に比べ3割程度で検査が終了し大幅な時間短縮となった。 このことを踏まえ、本研究ではペグボードを簡易アプリで再現することを試みる。既存の機材は特定の場所の形に合わせてパズルの型を素早くはめ込む、手先の器用さを測定する検査である。当該年度においてはアプリ作成会社と協議を重ね、アプリを作成した。アプリ版のペグボードでは指先を使って、型の方向を変え、特定の場所にぴたりと当てはめるタスクとした。今後は臨床場面において、従来の検査とアプリ版の検査を同時に実施し、簡易アプリ版のペグボードの妥当性を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ストループテストのアプリ版に関して、これまでの成果を国際学会にて発表を行った。ストループテストは従来の検査に比べて検査時間の短縮に成功した。また、iNPH患者における、手術後の予後予測の解析を行い、術前のアプリ版ストループの結果が術後の結果を予測し得た。今後はこの結果をふまえ、国際雑誌掲載のための準備を進めている。 アプリ版ペグボードにおいては開発にあたり、タッチパネルに不慣れな高齢者にとって扱いやすいデザインや、操作感のあるアプリを作成するように努めた。主に指で形の操作や移動することが可能な仕様となったが、タッチパネルに不慣れな場合も考慮し、タッチペンを用いた操作も検討した。今後は従来の検査と合わせてアプリ版ペグボードテストを実施し、妥当性の検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ストループテストのアプリ版において従来の検査と比較し、アプリ版は従来検査との相関性を確保しつつ、検査時間の短縮が認められた。今後アプリ版を用いることにより、全体的な検査時間が短縮され、検査者および患者負担の軽減が期待される。 ペグボードのアプリ版においては今後臨床場面におけるデータを収集し、従来の検査とアプリ版の検査を実施し、アプリ版の妥当性を検討する。また、認知機能評価のための神経心理検査のアプリ化の成果について学会での発表を目指す。
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