研究課題/領域番号 |
23K19002
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
EOM JUNYONG 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (80979188)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | optical tomography / peak time / asymptotic analysis / inverse problem / 蛍光光拡散トモグラフィー / 逆解析法 / 漸近解析 |
研究開始時の研究の概要 |
蛍光光拡散トモグラフィー(fluorescence diffuse optical tomography, 以下FDOTと略) は、乳癌等の安全、廉価、簡便な検査法或いは手術時の乳癌周辺リンパ節の探索補助法として、その実用化が期待されている。しかし検査データから乳癌や周辺リンパ節位置を同定(決定と同義)する為の有効な逆解析法(インバージョン法) が確立していない。本研究は、この現状を打破する為のFDOT の新しい逆解析法の研究である。逆解析法としては、短時間漸近解析法を用いる。この漸近解析法の数学理論構築、そして計算アルゴリズム開発及び数値実験を実施する。
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研究実績の概要 |
研究者は蛍光光拡散トモグラフィー(Fluorescence Diffuse Optical Tomography, 以下 FDOT と略) におけるターゲット同定逆問題の理論的解法とその数値計算アルゴリズムの開発に向け以下の三つの業績を出した. JMP(2023)では, ターゲットがポイントターゲットかつ領域が半空間上である場合, FDOT の初期値境界値問題に対して境界条件が Dirichlet, Neumann, Robin のぞれそれの場合, FDOT 問題の解におけるピークタイム公式を導出した. この研究は FDOT 解の漸近挙動を導出し, この挙動に基づいて理論的なピークタイム表示式の計算した. CAC(2023)では, 領域が半空間上での Robin 境界値問題に対し, 先行研究である JMP でのピークタイム公式を精密化させポイントガーゲットの位置同定問題の理論的解法を構築した. 発展されたピークタイム公式は3次多項式の解として現れ JMP での公式より良い近似であることがわかった. さらに, 二分法を活用してポイントターゲットを位置を同定する数値計算アルゴリズムを与えた. 提案されたアルゴリズムは安定的かつ効率的であり精度が良いものであることが数値実験から判明され, マルチプルポイントターゲットにも適用できることがわかった. DIE(2024)では, 領域が半空間上 Robin 境界値問題に対し, FDOT 問題の解の漸近挙動をを理論的に導出した. この漸近挙動は CAC でのピークタイム公式の根拠になっているものである. この研究では, 導出された解の漸近式から直接ポイントガーゲットの位置を同定する逆問題考え, この問題の理論的解法を提案した. さらに, 解の漸近式から反復数値スキームを開発し局所的な可解性を実現できる条件を設け, シングル及びマルチプルポイントターゲットにも拡張して数値実験を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画した FDOT における peak time を活用した逆問題に取り組んで特により物理的に合うが数学的に厄介な Robin 境界値問題に対する逆問題の理論的解法の構築ができた. 領域が半空間かつポイントターゲットの場合, 今までなかった FDOT 解の誤差付き評価から peak time の近似公式を導出し, 本物の peak time と数値的に非常に良い近似であることが判明できた. 上記の peak time 近似公式がより一般的な場合, 例えば体積を持っているターゲットの場合や領域の境界が曲っている場合に対しもベースになることが期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究は次の二つの場合 (A)と(B) に対して, FDOT 解の漸近挙動を導出し, この挙動に基づいて peak time 表示式の計算, そしてこの表示式を用いた FDOT 逆問題の理論的解法とその数値計算アルゴリズムを与える. 更に, この数値アルゴリズムを数値実験を行って, その解法の有効性と限界について検証する. 詳細は以下の通りである.
(A) 体積を持つターゲットの場合: まずターゲットが半径 r>0 のボールのとき, 解の漸近挙動第一漸近項はのターゲットの体積(0 次モーメント) で決まることを示す. ターゲットが星形形状領域や一点に可縮な小領域の場合にもボールと同じような漸近挙動が得られることを確認する.
(B) 領域の境界が曲がっている場合: 第一歩としてまず領域がボールの場合, ポイントターゲットに対し FDOT の初期値境界値問題の解表現式を求める. ついで第二歩として, 解の短時間挙動の導出する. これらの理論研究を遂行した後, マルチプルポイントターゲットの位置と個数同定の数値アルゴリズムとその数値実験に関する研究を行う. 領域の形状がより一般な場合は, 解の局所的に明示可能な近似的表現式を, 拡散方程式の Green 関数のパラメトリックスを構成することにより求める. 次いでターゲットが均質蛍光濃度を持つ有限凸領域の場合を考える. この場合は, 領域の境界からの有限凸領域ターゲットの距離が一点の接触点で決まり, ターゲットの持つ蛍光性により強度が上がることに注意して欲しい. そうすると解挙動は触点の周りに局所化されて, この接触点は謂わばポイントターゲットの場合に相当し、同定可能な筈である.
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