研究課題/領域番号 |
23K19003
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
香川 渓一郎 北海道大学, 電子科学研究所, 特任助教 (10984221)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Cahn-Hilliard方程式 / 動的境界条件 / 臨界緩和 / 数値解析 |
研究開始時の研究の概要 |
相分離現象を記述する方程式であるCahn-Hilliard方程式に対して,境界での未知関数の時間発展を考慮する動的境界条件を課した問題を扱う.近年開発が進められている安定的な数値計算スキームを用いて数値シミュレーションを実施し,解のダイナミクスやパターン形成現象を調べる.特に,従来の静的な境界条件である斉次Neumann境界条件の場合によく知られている統計則が,動的境界条件の場合にどのように書き換えられるかを明らかにする.
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研究実績の概要 |
保存則を持つ相分離現象を記述する数理モデルであるCahn-Hilliard方程式の解の挙動を数値シミュレーションによって調べた。特に1次元区間上でCahn-Hilliard方程式を考え、境界である両端の二点では未知関数の時間発展を考慮する動的境界条件を課した初期値問題を扱った。この問題の解の挙動について、安定な数値計算手法の一つである離散変分導関数法に基づく離散スキームを用いて数値計算を実施し、従来の静的な境界条件である斉次Neumann境界条件での解の挙動と比較した。特に斉次Neumann境界条件下での空間1次元Cahn-Hilliard方程式に対する定常解について詳しく調べられている既存の結果と比較し、境界での時間発展の時定数がある臨界値に至ると、解が不安定定常解に留まることを示唆する結果を数値的に確認した。 動的境界条件でしか確認できない、境界での時定数が臨界値に近づくと定常解への緩和が対数的に遅れる現象(臨界緩和現象)について国際会議ICIAM2023や第17回応用数理研究会で報告し、論文を執筆した。現在、当該論文は投稿中である。本研究は数値的に信頼のおけるスキームで動的境界条件の下でのCahn-Hilliard方程式の解のダイナミクスを数値的に調べ、静的な境界条件では実現されない現象を発見した点で意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
空間1次元での動的境界条件下におけるCahn-Hilliard方程式に関する数値計算によって観られる臨界緩和現象を報告する論文を1本投稿中である。2023年度内に出版されることを目指していたため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施されなかった、線形または非線形のポテンシャル項を含む動的境界条件について解の挙動を調べ、対応する静的な境界条件であるRobin境界条件や非線形境界条件との比較によって動的境界条件の解の挙動に関する理解を深める。 Okumuraらによって開発された空間2次元でのCahn-Hilliard方程式に動的境界条件を課した問題に対して安定的に数値計算を行う数値計算スキームを用いて、空間2次元における動的境界条件下でのCahn-Hilliard方程式の解の挙動やパターン形成現象を観察、静的な境界条件の場合との比較を行い、境界での時間発展がパターン形成現象に及ぼす影響を調べる。
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