研究課題/領域番号 |
23K19007
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金城 翼 京都大学, 数理解析研究所, 助教 (90982778)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | Donaldson-Thomas理論 / モジュライ空間 / 主G束 / 局所系 / 導来代数幾何学 / 数え上げ幾何学 / ヒッグス束 / 導来代数幾何 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は数え上げ幾何学の対象範囲を広げることを目的とする。特にDonaldson-Thomas不変量の一般化として、主G束などの非線形な幾何学的対象を数え上げる不変量を導入し、その振る舞いを調べる。また、これらの不変量の層理論的な圏化を導入し、コンパクトリーマン面上のG-ヒッグス束のモジュライ空間やG-局所系のモジュライ空間のコホモロジーの研究に応用を与えることを目指す。
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研究実績の概要 |
今年度は主にAndres Ibanez Nunez氏とChenjing Bu氏と共同で非線形Donaldson-Thomas(DT)理論の基礎づけに関する研究を行った。主要な成果として以下が挙げられる:(1)Joyce氏による一般化DT不変量の定義の一般のスタックへの拡張、(2)一般化DT不変量の極非存在定理の一般のスタックへの拡張、(3)一般化DT不変量の多重被覆公式の一般のスタックへの拡張。 これらの結果により、壁越え公式を除くDT不変量に関する主要な事実のほとんどを非線形な対象のモジュライ空間に拡張することが可能となった。Joyce氏の証明はどれも非常に難しく専門家でも理解している人はほとんどいなかったが、我々の証明はどれも非常に簡明であり、線形な対象のDT理論を理解する上でも役立つものであると考える。
また、非線形DT理論の基礎づけを与える過程で、全く思いがけない形で導来シンプレクティック幾何学に関するJoyce予想を三次元カラビヤウ圏のホール対応の場合に証明することに成功した。この研究はHyeonjun Park氏とPavel Safronov氏と共同で論文にまとめている。この場合のJoyce予想の帰結として三次元カラビヤウ圏の臨界コホモロジーホール代数を構成することが可能となる。これは物理的にはあるクラスの場の量子論に付随するBPS状態のなす代数に対応するものであり、数学的には2010年ごろにKontsevich-Soibelmanによって存在が予想されたものである。この代数構造を用いることで今後(非線形)DT理論の圏論化が格段に進展することが予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
非線形DT理論の基礎のほとんどが完成し、さらに三次元カラビヤウ圏のホール対応の場合にJoyce予想が証明できたため。
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今後の研究の推進方策 |
非線形DT理論に関して、壁越え公式の一般化を定式化し証明することが目標である。これが完成すると数値的DT理論における主要な事実の全てが非線形化されたことになる。
その後、非線形DT理論の圏化に関する研究を進める。臨界コホモロジーホール代数の非線形類似物も既に構成しており、この代数構造を用いることでほとんどの主張を局所模型の場合に帰着することができることがわかっている。そのため、局所模型の非線形DT理論の圏化を理解することが今年度の主要な研究課題となる。また、壁越え公式は局所模型に帰着すること自体が非自明であり、そのメカニズムを理解することも課題である。
局所模型の非線形DT理論の圏化を理解する上ではDavison-Meinhardtの研究を一般化するのが基本的な方針であるが、Davison-Meinhardtの研究が依存しているMeinhardt-Reinekeの論文には主要な間違いが複数あることが指摘されている。そのためKirwan blowupの理論などを駆使することでDavison-Meinhardtの理論を再構築・一般化することを目指している。
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