研究課題/領域番号 |
23K19012
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
齋藤 隆大 中央大学, 理工学部, 助教 (50844841)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 混合ホッジ加群 / ミラー対称性 / irregularホッジ理論 |
研究開始時の研究の概要 |
混合ホッジ加群の理論とは、「コンパクトケーラー多様体のコホモロジー群がホッジ分解と呼ばれる自然な分解を持つ」事を、D-加群の理論をベースにして``偏屈層上のホッジ理論"として一般化した理論である。本研究では、混合ホッジ構造の変動・混合ホッジ加群にかかる制約を観察することで、これらの代数的なデータによる記述を行う。 また、それのミラー対称性の研究への応用として、LGモデルに対するガウス-マニン接続上のホッジフィルトレーションの記述を行い、またワインシュタイン多様体上の深谷圏の対象に``ホッジ加群の構造"を導入し、Koszul双対性のホッジ理論的な解釈を行う。
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研究実績の概要 |
【第一の研究】(桑垣樹氏との共同研究)有限個の射影直線同士を一列に点で接着してできる複素曲線をX、その球面の余接束をplumbingと呼ばれる方法で貼り合わせたシンプレクティック多様体をYとするとき、Yのwrapped深谷圏とXの超局所層の圏の間には対応がある事が知られている。ここで、Yのwrapped深谷圏は、Y内のラグランジアン部分多様体を対象として持つ圏で、Xの超局所層の圏とは、Xの各射影直線上、端点以外の点では特異点が無い構成可能層の組で、隣り合う射影直線上の構成可能層がフーリエ変換で移りあうようなものを対象とする圏である。 前者の圏は、各球面の一点における余接空間で生成されるが、今年度はまずそれに対応する後者の圏の対象の特定を行った。申請者の前年度までの研究により、「モノドロミックな混合ホッジ加群のフーリエ変換」の概念が自然に定義できる。これを用いる事で、その具体的に表示されたXの超局所層の圏の対象に自然な``混合ホッジ加群の構造"を導入した。これにより、ホッジ加群の重みづけが、各対象の射の空間に自然な次数を誘導する。この次数が、Etgu-LekiliによるGinzburg代数を用いた自然な次数付けと一致するという事の、証明のスケッチが得られた。 【第二の研究】申請者の前年度までのモノドロミックな混合ホッジ加群の研究の自然な拡張として、滑らかなトーリック多様体上の正規交叉型の混合ホッジ加群の研究を行った。前年度までは射影空間上の対象に対する箙表現を用いた記述、及びドラームコホモロジーの記述、を既に行っていたが、今年度はそれらを二次元の場合に一般の滑らかなトーリック多様体上の対象まで拡張する事ができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第一の研究については、当初「深谷圏の対象としての各球面の一点における余接空間、に対応する超局所層の圏の対象」の特定は容易であると予想していた。シンプレクティック多様体上のReebフローと呼ばれるベクトル場を用いた記述は既に知られており、それを適切に複素構成可能層の言葉に翻訳する事で解決できると考えていたが、有界でない層の複体を扱う事は予想外に困難であり、時間のかかる作業であった。しかし、それの攻略のために用意した新しいテクニックはそれ自身興味深い内容であり、今後より一般的な枠組みで研究を行うためにも役立つものであると言える。 第二の研究については、一般次元ではなく、二次元の場合のみの進展であったが、この場合は満足できる形での帰結が得られ、三次元以上の場合に対しても、具体的な取り扱いの難しいポイントを明確にすることができた。 総合的に、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
第一の研究については、まず一般的な枠組みでの議論・及びEtgu-Lekiliの次数付けとの比較の厳密な証明を行うために、「余接空間に対応する超局所層の対象」に関連する諸定理の証明を洗練させ、精密なものにする必要がある。そして、現在証明のスケッチしか得られていない、Etgu-Lekiliの次数付けに関する考察に、厳密な証明を与える。 これまではディンキングラフのA_nに対応するXに対してのみ、議論を行ってきたが、その後、D_nの場合に同様の結論を得る事を目指す。 第二の研究については、二次元のトーリック多様体上のホッジ加群に対する議論を、三次元以上のトーリック多様体に対して適用する事を行う。 その後、滑らかとは限らないトーリック多様体上のホッジ加群を同様に箙表現を用いた記述を行う。
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