研究課題/領域番号 |
23K19017
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0201:代数学、幾何学、解析学、応用数学およびその関連分野
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
渡辺 樹 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (70979616)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 確率制御 / 流体極限 / ハミルトン・ヤコビ・ベルマン方程式 / 粘性解 |
研究開始時の研究の概要 |
最適制御問題では、モノ (人や粒子など) の動きを制御することで、価値関数と呼ばれる評価関数の最大 (最小) の実現を目指す。よく知られている手法として、価値関数を偏微分方程式の解として特徴付ける方法があるが、非線形性や境界条件などの方程式の複雑さから現実の問題に対してどの程度有効かを数値解析的に検討することは当分野の研究における一つの大きな課題である。本研究では、 制御問題の新たな数値解析手法として、粒子系と呼ばれる連続時間確率モデルの有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、最適制御問題の解法の一つであるハミルトン・ヤコビ・ベルマン(HJB)方程式の数値解法として、粒子系と呼ばれる連続時間マルコフ連鎖の有用性を明らかにすることを目指す. これまで行われていた倒産問題などに応用可能な吸収壁をもつモデルに現れるHJB方程式の解析に対して, 本研究では実社会によく現れる生物モデルや待ち行列などの反射壁を持つモデルに対する同様な解析を行うことで, 反射壁をもつ粒子系の制御問題のある種の極限としてノイマン境界値条件付きHJB方程式が導出可能であることを粘性解の理論を用いることで明らかにした. 具体的には反射壁を持つモデルの値関数が満たす差分型のHJB方程式を導出し, 粘性解の安定性解析を行うことで, 値関数の極限がノイマン境界値条件付きHJB方程式の粘性解であることを示した. 本結果は現在, 査読付き国際誌への投稿向けて準備中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
反射壁の場合は吸収壁における解析とは異なり, 境界での振る舞いを精密に解析する必要があった. そこでテスト関数に修正項を加えることで境界上での解析を内点の場合と同様に扱うという粘性解特有の議論を用いることで, 当初予定していた反射壁をもつ粒子系を用いてノイマン境界条件を持つHJB方程式の近似解析に成功した. これは今後のより複雑な境界条件下での解析にも応用可能なものであることが期待される. 上記の理由から本研究は概ね計画通りに進んでいると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後はより複雑な境界条件, 特に非線形ノイマン境界条件を持つHJB方程式の数値解析に取り組む. この方程式は優先権のある待ち行列の制御問題に現れることが示唆されている. これは人の数は負の値を取らないという通常の反射壁に加えて, 優先権を持つ人がいるかどうかで挙動が変わるというもう一つの反射壁を持つと考えることができる. そこでまずはそのようなモデルの連続極限, つまり客数を無限大した時の極限が満たす方程式を明らかにすることを目指す. その後, 粘性解の安定性解析とこれまでの通常の反射壁の場合の知見を基に, 上述のモデルの制御問題の極限として非線形ノイマン境界条件を持つHJB方程式が導出可能であることを明らかにする.
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