研究課題/領域番号 |
23K19024
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有沢 洋希 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 助教 (70981033)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スピントロニクス / スピンメカニクス / マグノン-フォノン相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、スピントロニクス分野において「フォノンのスピン角運動量」という物理概念に注目が集まっている。本概念の導入により情報処理技術としてのスピントロニクス分野の応用可能性が大きく拡がることから、フォノンスピン角運動量に関する研究が盛んに行われている。しかしながら、スピン偏極したフォノンの実験的な励起・検出方法が十分に確立されていないため、フォノンスピン角運動量に関する研究は未だ理論先行の段階にある。そこで本研究では、レーザーを用いたフォノンスピン角運動量の励起・検出手法を構築することでこの課題を解決し、フォノンスピン角運動量を含めたマグノン-フォノン混成現象の開拓及び基礎原理の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、レーザーを用いたスピン偏極フォノンの実験的励起・検出方法を確立し、フォノンのスピン角運動量に起因する新規マグノン-フォノン混成現象を実証・開拓することである。 本研究目的を達成するためには、マグノン及びフォノンの検出手法の確立が最重要事項である。そこで本年度はフェムト秒レーザーを用いた磁性体中の磁化及び歪みの測定系構築に取り組み、マグノン-フォノン結合の超高速ダイナミクスを高感度に検出する手法を確立した。実験では、大きなマグノン-フォノン結合を示す候補物質として、巨大な磁気弾性相互作用を示す磁性体Tb0.3Dy0.7Fe2に注目した。本物質にフェムト秒パルスレーザーを入射することで磁化及び歪みダイナミクスを誘起し、生じた磁化変化を入力パルスレーザーと同期したフェムト秒パルスレーザーにより時間分解検出することで、超高速磁化ダイナミクスの測定に成功した。また本物質表面を反射する入力レーザーパルスの反射率を同時測定する事で、入力レーザーに応じて本物質中に生じる歪みダイナミクスの高感度検出を実現した。ここで構築した磁化と歪みの時間分解同時測定系を用いれば、磁気弾性結合系で実現するフォノンスピン角運動量由来のマグノン-フォノン結合現象の実験的開拓が可能となる。さらに、Tb0.3Dy0.7Fe2中の巨大な磁気弾性相互作用を取り入れたレーザー誘起磁化/歪み応答の数値計算を行い、本物質中で生じる磁化-歪み結合ダイナミクスの典型的な時間スケールを定量的に評価することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究により、磁気弾性結合物質中の磁化ダイナミクス及び歪みダイナミクスを高感度に同時検出する測定系を構築した。これにより、磁化-歪み結合現象の超高速時間応答の実験的開拓が可能となった。さらに磁気弾性結合を加味した数値計算により、磁化-歪み結合ダイナミクスの時間スケールの定量的な見積りを行なった。以上の研究成果は、レーザーを用いた新規マグノン-フォノン結合現象の実証に向けた重要な研究指針となり、本研究目的完遂のための研究基盤が十分に整ったといえる。以上の事実を鑑みて、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、今年度構築した測定系を駆使し、磁気弾性結合物質中に生じる磁化ダイナミクスと歪みダイナミクスの超高速時間相関の検出を試みる。得られた実験結果を今回開発した数値解析手法と組み合わせることで、フォノンのスピン角運動量を包含した新規マグノン-フォノン結合現象の物理原理の解明を目指す。
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