研究課題/領域番号 |
23K19027
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大熊 隆太郎 東京大学, 物性研究所, 助教 (20983555)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 磁性 / トポロジー / フラストレーション / スキルミオン / 励起子絶縁体 / ファンデルワールス / トポロジカル相 |
研究開始時の研究の概要 |
バンドのトポロジーによって実現するトポロジカル電子相とスキルミオンのようなトポロジカル磁性をつなぐ新しい物質としてファンデルワールス磁性体GdGaIを提案する。これまでの研究からGdGaIではホールと電子がペアを組んで凝縮する励起子絶縁体であり励起子が局在スピンと結合することで最小のスキルミオンが結晶化していると予想されている。バルクの電子状態はフルギャップにも関わらず表面状態にはノードが存在していることから何らかのトポロジカル量子相が実現している可能性が高い。そこでGdGaIの電子状態を詳細に明らかにするため量子ビームを使った結晶構造と磁気構造の決定及び詳細な輸送特性の測定を行う。
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研究実績の概要 |
本研究では磁性励起子絶縁体の候補物質であるファンデルワールス磁性体GdGaIの電子構造および磁気構造を実験的に明らかにすることが目的である。まず磁気構造に関して重要な知見を得た。単結晶を用いた核磁気共鳴スペクトルの観測に成功し、磁気転移温度以下において2つの非等価なヨウ素サイトが存在することがわかった。これは局在した磁性を持つGdが2x2倍のユニットセルを持つ非共面的な磁気構造を形成することを強く支持している。この非共面的な磁気構造は金属磁性体で一般的に見られる1つの波数ベクトルで記述されるスピン密度波やスパイラル構造とは異なり3つの波数の重ね合わせで記述される特異な磁気構造である。いわば最小のスキルミオンと見なせることから巨大異常ホール効果の実現が期待される。
続いてこの磁気構造の起源に迫る結果がX線磁気円二色性(XMCD)測定により得られた。すでに角度分解光電子分光の測定からフェルミエネルギー近傍にΓ点にGa-4pからなるホールバンド、M点にGd-5dからなる電子バンドが存在することや低温でホールと電子バンドが折り返してバンドギャップが増大することがわかっている。今回Gd-5dの電子状態に敏感なM2,3端のXMCD測定を行うことでGd-5d電子が0.3eV程度の大きなスピン分裂を生じていることがわかった。スピン分裂はGd-5dと4f間のフント結合によって生じる一方、ホールバンドでは生じないため、Gdの磁性が発達するほどホールと電子バンドの重なりが増える(=励起子の密度が上昇する)ことを意味している。励起子を波数空間全体に埋め尽くす場合には3つの波数が必要とされるため最小のスキルミオンが自然に生成されると考えられる。
これらの結果をまとめて国際会議において研究発表を行い、論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
先行研究では得られていない1mm程度の単結晶を得ることに成功し、それを用いた角度分解光電子分光や核磁気共鳴実験に成功している。今後は再現性良く数mm程度の単結晶を得ることが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
最小のスキルミオン構造の形成をより強固に確認するため共鳴X線実験を行うことを予定している。試料が大気や水分と容易に反応するためグローブボックス内でのマウント方法を確立することが目標である。また大型単結晶を用いたホール効果や走査型トンネル分光の測定を通じて電子構造のトポロジカルな性質を明らかにすることを目指している。
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