研究課題/領域番号 |
23K19032
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 真 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (20983919)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 強相関電子系 / 非従来型超伝導 / 超伝導 / 電子構造 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
非従来型超伝導体において、超伝導発現機構および超伝導超伝導秩序変数の解明、そして超伝導転移温度の定量的評価は未達成の課題である。超伝導を正しく理解するためには常伝導状態の電子構造を理解する必要があるが、近年主流となっている理論では現実と異なる電子構造を導くことが多々報告されている。本研究では、まず電子構造を精査した上で超伝導の理論計算を行い、非従来型超伝導体のギャップ関数および転移温度を明らかとする。特に、普段見落とされがちな分子の内部構造を考慮した電子構造計算を行なう。そして、ゆらぎ交換近似や動的平均場理論等を用いて強相関効果を取り入れ、各物質の電子構造と超伝導を明らかにする。
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研究実績の概要 |
有機超伝導体の一大物質群であるκ型BEDT-TTF超伝導体の理論研究を行った。8種のκ型BEDT-TTF超伝導体において常圧超伝導が報告されているが、超伝導対称性・転移温度は物質によって異なる。この違いの原因を明らかにするために、密度汎関数理論(DFT)および揺らぎ交換近似(FLEX)を適用した。結果として、BEDT-TTF分子の配置が持つ異方性の強さによって、磁気感受率のピーク位置が変化することが明らかとなった。この磁気感受率の差異によって超伝導対称性・転移温度が変化することが予想される。 本課題の開始と同時期に韓国のグループによって室温超伝導体の発見が報告された。銅ドープが施された鉛アパタイト(いわゆるLK-99)である。LK-99の主要構造は、κ型BEDT-TTF超伝導体と同様の三角格子である。本課題との関係性から、LK-99の研究も行った。LK-99の室温超伝導が事実であれば革命的な発見であったが、その後の追試によって超伝導の可能性が否定された。超伝導の証拠とされていた磁気浮上についても、超伝導ではなく強磁性が原因であるとの見解が示されている。しかしながら本物質で強磁性が発現することは自明ではない。そこで本研究ではLK-99の電子構造・磁気構造に関する第一原理的な研究を行った。結果として、純粋なLK-99では反強磁性を示すものの、微量な電子ドープによって強磁性が出現することを明らかにした。単純な三角格子では電子ドープによって強磁性が出現することは知られていたが、LK-99では簡単に実現可能なほど微量な電子ドープで強磁性が現れる。このLK-99の特徴は、三角格子が積層していることに起因していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たな研究対象が加わり当初予定していた計画を変更せざるを得なかったが、三角格子系に対する新たな知見を得ることができたため。反強磁性・強磁性転移に着目した新たな研究結果が期待できる。κ型BEDT-TTF超伝導体に関しては、超伝導の計算が未完結である。これは、莫大な計算コストによるものである。計算スキムは完成しているため、計算コードの高速化およびパラメーターの工夫をして翌年度に実行する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
LK-99の理論研究で得た知見をもとにして、新たな反強磁性・強磁性転移を探索する。これは非従来型超伝導に大きな影響を与えることが予想される。κ型BEDT-TTF超伝導体に関しては、超伝導の計算を完了するために計算コードの高速化を計画している。
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