研究課題/領域番号 |
23K19038
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
大貫 良輔 東京理科大学, 創域理工学部先端物理学科, 助教 (40979431)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | コロイド結晶 / 構造色 / 光学材料 / 偽造防止材料 / フォトニック結晶 |
研究開始時の研究の概要 |
コロイド粒子は自己組織化によりきれいな結晶体(コロイド結晶)となり、鮮やかな色を呈する。この発色は構造色と呼ばれ、色あせない色材として注目されている。本研究で取り扱う特定の結晶方位が表面に露出したコロイド結晶はこれまでにない新しい特性を持つ可能性を秘めている。このコロイド結晶の作製を試み、反射の特性を調査することが本研究である。本研究が達成された場合、新しい特性を持つ構造色材料となり、偽造防止材料として展開できると期待される。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実施計画に基づき、(110)面が表面を向いたコロイド結晶の作製を試みた。(110)面を成長させたコロイド結晶を作製するための基板として、ナノインプリント技術により作られた筋状の溝が彫られたフィルムを使用した。このフィルムを鋳型としてコロイド結晶を作製した。コロイド結晶は、コロイド粒子が分散した懸濁液に基板を垂直に浸してゆっくり引き上げるディップ法を用いた。その結果、一部の結晶において、粒子が正方格子状に配列した表面が観察された。これは(100)面に対応しており、界面エネルギーが最も低くなる(111)面とは異なっていた。つまり、基板の形状によりコロイド結晶の成長格子面を変化させることに成功した。しかし、この面は本研究の狙いである(110)面とは異なっている。今回使用した基板は周期的な溝であったため、溝の中での粒子の位置関係は固定されていなかったことが原因であることが考えられる。2023年度の研究実施計画では、プラズマエッチング法を用いて、シリコンウェハ上に(110)面の粒子配列の周期パターンの作製を行う予定であった。しかし、日程調整が合わず、まだ作製できていない状況である。2024年度はより(110)面にマッチした基板を作製することで、(110)面が表面を向いたコロイド結晶の作製を行い、その光学特性を調査する。 また、球形のコロイド結晶は様々な構造を有することが最近明らかになり、その内の一つに十面体対称性を有する構造がある。この十面体構造の球状コロイド結晶の光学特性を詳細に調査した。その結果、雫状や半月状の反射パターンが観察され、その反射波長を理論的に計算した。この成果は、本研究におけるコロイド結晶の光学特性を明らかにするうえで一助になると期待され、日本化学会でポスター発表を行い、Chemistry of Materials誌に論文として投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況として、基板上にコロイド結晶を作製し、(111)面以外の面が露出したコロイド結晶を作製することに成功している。しかし、本研究の狙いである(110)面が表面に向いたコロイド結晶の作製はまだ達成できていない。2023年度にプラズマエッチング法を用いて、シリコンウェハ上に(110)面の粒子配列の周期パターンの作製を行う予定であった。しかし、日程調整や準備の都合上、まだ作製できていない状況である。今年度の始めに基板の作製を行う予定である。以上より、当初の予定よりも少々遅れている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、2023年度に行う予定であったシリコンウェハ上に(110)面の粒子配列の周期パターンの作製を行う。その基板を用いてコロイド結晶の作製を試み、(110)面が表面を向いたコロイド結晶の作製を目指す。作製後においては、結晶の表面構造を走査型電子顕微鏡を用いて観察し、(110)面の粒子配列になっているかを確認する。また、透過型電子顕微鏡を用いて結晶の断面を観察し、(110)面が積層しているか、内部も結晶化しているかを確認する予定である。 コロイド結晶の作製に成功したら、作製したコロイド結晶の光学特性を調査する。主に反射の角度依存性と偏光特性の2点について明らかにする計画である。反射の角度依存性の評価においては、角度ごとの反射スペクトルを測定し、理論計算と比較する。(110)面が表面に露出したコロイド結晶は、アカエリトリバネアゲハの持つV字型の構造と似ているため、観察角度の増加に応じて反射が長波長シフトすることが期待される。偏光特性の評価においては、偏光子を用いて反射の偏光特性を調査する。(110)面のように粒子配列に異方性が存在する場合、反射に偏光特性を持つことが知られている。以上の成果をまとめて、偽造防止材料などの光学材料への展開を追求する。
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