研究課題/領域番号 |
23K19042
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0202:物性物理学、プラズマ学、原子力工学、地球資源工学、エネルギー学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
石川 諒尚 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (70983005)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 電離放射線 / 中性子 / シンチレータ / リアルタイム計測 / 光ファイバ型中性子検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
光ファイバ型中性子検出器は、高強度中性子場において照射中にリアルタイムで中性子量を測定できる画期的な中性子検出器である。しかし、使用するシンチレータ小片の形状制御が困難で、形状効果の補正や検出器の均質性が実用化に向けた課題であった。加熱・溶融に伴う表面張力によりシンチレータ小片を半球状に整形できることを明らかにしたが、大気下では試料の発光特性が劣化することがわかった。本研究では、形状制御における適切な条件を見出し、発光特性の劣化を抑制した無機シンチレータ小片の形状制御技術を確立する。これにより、供給が停滞したヘリウム-3に代わる標準中性子検出器として光ファイバ型中性子検出器の実用化を図る。
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研究実績の概要 |
小片状無機中性子シンチレータ試料の形状制御を企図して、電気炉を用いた同試料の加熱・溶融試験を実施した。本実験は、小片状試料の加熱温度を①約900℃、②約1,000℃、③約1,100℃とした。また、試料を白金箔上に配置し、不活性ガス雰囲気下で加熱することで加熱環境中の不純物による試料への影響を低減した。実験後の各加熱温度における試料の性状は以下のとおりであった。①②約900、1,000℃: やや茶褐色に変色し、顕著な形状の変化はみられなかった。③約1,100℃: 暗灰色に混濁し、液滴状形状で白金箔に固着した。 加熱後試料との発光特性比較のため、参照用データとして加熱前の小片状無機シンチレータ試料を用いて中性子による発光スペクトル測定を実施した。加熱前試料をその発光波長において十分な透過性を有する透明光学樹脂中に封入し、カリホルニウム252自発核分裂中性子源からの中性子による発光を測定した。加熱前試料では、波高スペクトル中に中性子イベントに対応した明瞭な中性子ピークが形成されることを確認した。 小片状無機中性子シンチレータの形状把握を企図して、製作した小型中性子検出器のマイクロCT撮像実験を実施した。撮像画像中で小片状無機中性子シンチレータとみられる像を確認できた。しかし、反射材の酸化チタンIV層によるビームハードニングや設置精度の影響により明瞭な三次元形状を描出するには至らなかった。 小片状無機中性子シンチレータ中の中性子コンバータ数低減による自己遮蔽抑制効果を検証するため、リチウム6濃縮率が異なる2種類の小片状試料の熱中性子に対する応答を模擬したシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、リチウム6高濃縮の試料では実用上使用可能な最小粒径で有意な自己遮蔽が生じてしまうのに対し、天然存在比の試料では数百ミクロン以下の粒径であれば有意な応答低下はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小片状無機中性子シンチレータ試料の加熱実験を完了し、不活性ガス雰囲気下でも加熱後試料の発光特性に影響を与えると考えられる性状変化が生じることが明らかとなった。この加熱・溶融法については、比較参照用の加熱前試料の発光特性が完了しており、加熱後試料の発光特性評価のための波高スペクトル測定を残すのみである。小片状無機中性子シンチレータ試料の形状効果補正または低減に向けて、上記と並行した下記の取り組みによりいくつかの知見が得られている。小型中性子検出器のマイクロCT撮像による小片試料の微細三次元形状の把握を企図した実験を行い、検出器内での小片試料の位置や形状を明らかにすることが可能である見通しが得られた。中性子コンバータ数低減による自己遮蔽抑制効果をシミュレーションにより評価し、リチウム6天然存在比の小片試料を用いることで実用上使用可能な粒径で形状効果を低減できる見通しが得られた。これらの方策により同試料の形状効果の解析的補正または低減が実現できる可能性が示された。こうした現状と研究計画から、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると評価した次第である。
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今後の研究の推進方策 |
加熱処理を施した小片状無機中性子シンチレータ試料の発光特性を評価するため、加熱前試料を用いた比較測定と同一の条件で中性子計測実験を実施する。この実験では、試料の発光波長において十分な透過性を有する透明光学樹脂中に封入した加熱後試料の中性子による波高スペクトルを測定し、加熱処理による劣化の有無、またはその程度を評価する。 マイクロCTによる小型中性子検出器撮像実験を実施し、検出器中の小片試料の位置や微細三次元形状を明瞭に描出できる条件の探索を行う。明瞭な微細三次元形状が得られたら、それをシミュレーション空間上で模擬し、形状効果の解析的補正の可能性を検証する。 リチウム6濃縮率の異なる2種類の小片状無機中性子シンチレータ試料を用いて小型中性子検出器を製作し、大強度パルス中性子源施設において飛行時間測定法を実施する。その測定結果において、熱中性子をはじめとする低エネルギー領域で両者の応答を比較し、リチウム6高濃縮のものに比べて天然存在比のものではどの程度自己遮蔽効果が抑制可能であるか評価する。 小型検出器のさらなる小型化のため、検出器先端をチタンキャップや化学メッキなどで遮光する手法について検討を行う。
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