研究課題/領域番号 |
23K19049
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
留目 和輝 東京工業大学, 理学院, 助教 (90982520)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 高輝度LHC / 素粒子実験 / 長寿命粒子探索 / トリガー / 飛跡検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はダークマターの正体を解き明かすため、その候補として有力な長寿命新粒子の探索を推し進めるものである。具体的には、先行研究でボトルネックとなっていた、長寿命新粒子に特徴的な飛跡情報そのものをトリガーシステムで検知するための技術開発を行う。この達成には短時間での飛跡再構成が課題となるが、本研究では画像認識等で用いられるハフ変換をアクセラレータ上で実装することで克服する。長寿命新粒子に特徴的な飛跡情報を対象とした同システムの開発は世界で初の試みである。本研究の目標は長寿命粒子に特徴的な飛跡をオンラインで再構成できるシステムの構築及び、実験のデータを用いたデモンストレーターの作成である。
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研究実績の概要 |
本年度は、長寿命粒子に特徴的な飛跡情報を対象としたシステム開発を行うため、まずは標準的な飛跡情報を対象としたシステム開発を行った。シミュレーション上で論理的に機能するハフ変換の実装はおおむね完了し、残すは実装した論理ブロックに対する入出力部分の実装のみとなった。入出力部分には近年開発が進められているAXI mappingの技術を用いて、より汎用性の高いシステムとしての構築を目指している。 並行して、長寿命粒子の物理シミュレーションを用いて、理想的な状況下での性能評価が可能なソフトウェア開発を行った。ここでは理想的な環境下でも、従来の2次元情報だけを用いるハフ変換では飛跡の誤検知率が無視できないことが明らかになった。これは、任意の複数の通常の飛跡が残すヒット情報の組み合わせにより、偶然長寿命粒子が残す飛跡に類似した飛跡が再構成される可能性が無視できないほど高いためであることが明らかになった。偶然による偽信号であるため、そのような確率を削減するため、従来システムでは使用されていなかったz方向の情報を導入し、誤検知率の抑制を行うことを今後検討する。 開発に関して、従来アクセラレータを含めた独自の開発環境の構築を検討していたが、実験グループにて共同で利用可能なデモンストレータの構築を進めることになったため、方針を変更し、デモンストレータを活用しての開発のための打ち合わせを進めている。国内においては、廉価版アクセラレータを用いて基本的な試験を行うことで、将来実験グループで構築する上位版のアクセラレータを含むデモンストレータ用いた性能評価を円滑に行えるよう国内での研究開発を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
従来予定では本年度から国内にアクセラレータを含む試験用システムの構築を行い、そのシステムを用いた試験を計画していた。しかしながら、研究グループにて共同で利用可能なデモンストレータの構築計画が立ち上がったため、複数の研究グループで独自に試験用システムを構築し、その後各試験用システムの環境の違いに対応していくよりも、同じシステムでの試験を目標とする方が効率的かつ経済的であると結論付けた。このため、本年度は廉価版アクセラレータを用いた試験にとどめ、来年度に研究グループで構築されるより高価なアクセラレータシステムでの順調な試験を目指すための準備段階を行うことにした。 以上の理由により、本年度は高い計算コストを必要とする大規模システムの開発へは進まずに、学内に設置できたアクセラレータに搭載可能な実現可能性試験用システムの開発及び効率化に専念することとなった。従来予定の開発よりやや遅れているが、本段階で大規模システムへの導入に必要な開発は着実に行われており、また予定より詳細な最適化が事前に行われたため、この遅れの取り返しはデモンストレータ構築後に可能であると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
先述したように国内で独自の開発環境を構築するのではなく、実験グループ共同で利用可能なデモンストレータを用いた開発を手段とすることになった。これにより、当初の計画で環境構築に要するとされていた予算と労力を、現地での実開発に充てることが可能となる。これを実現するために、デモンストレータの開発が行われているCERN及び、共同でシステム開発を行っているイタリアとの密な共同研究開発を推進する。特にイタリアのボローニャグループは今後構築予定のデモンストレータと類似した昨日のアクセラレータカードを所有しており、また類似の開発経験者がいる為、我々グループと共同しての開発により、研究の効率的な遂行が期待される。この開発はリモートでも不可能ではないが、理想的にはオンサイトで開発を行うことがより効率的であるため、可能な範囲で現地への渡航をして開発を行う。本年度のアクセラレータ上の開発に関しては、まずは標準的な飛跡を対象としたシステム開発を行うことになる。これは長寿命粒子を対象としたシステムを実現するために必要不可欠な初期システムとなり、これを達成することにより、より現実的な長寿命粒子を対象としたシステムの開発が可能となる。 国内では、本研究の目的である長寿命粒子を対象としたシミュレーションによる研究を引き続き進める。特にこれまで使用していなかった次元を加えての解析には、計算リソースの増加が予想され、検出精度と現実的な計算リソースとのバランスを詳細に検証する必要がある。このシミュレーションは既存の計算機システムを活用することで可能であると考えられるため、オンラインで利用可能な実験グループの計算機システムを活用して研究を進める。
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