研究課題/領域番号 |
23K19050
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嵯峨 承平 名古屋大学, 高等研究院(素粒子), 特任助教 (60813772)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 観測的宇宙論 / 銀河クラスタリング / 宇宙の大規模構造 / 暗黒物質 |
研究開始時の研究の概要 |
観測される銀河分布が示す統計的な非等方性は、重力が支配する宇宙の構造形成のプローブとして宇宙論スケールでの重力の検証に利用され、標準宇宙モデルの一定の成功を支持をする一方で不整合性も明らかにした。次の10年の非等方性の精密観測では、これまでの非等方性と質的に異なり、重力の影響が色濃く残る「双極子的非等方性」の検出が期待されている。本研究の目的は、双極子的非等方性による重力の新規検証法を構築することで、次世代観測に立脚した堅固な宇宙モデルの指針を与えることである。
|
研究実績の概要 |
これまでの赤方偏移サーベイでは検出が困難と考えられてきた双極子的非等方性のシグナルが、続々と計画されている次世代の銀河サーベイによる膨大な銀河の分布を利用することで高いシグナルノイズ比で検出可能となると期待でき、そのシグナルは重力理論や等価原理の新しい検証法のためのプローブであることが知られてきた。重力の性質が色濃く残る双極子的非等方性は、異なる性質の天体同士の相関を調べた時に初めて検出される(重い銀河と軽い銀河、青い銀河と赤い銀河など)。そのため、2種類の異なる性質の天体を用意するために、銀河サーベイで得られた1つの銀河カタログをどのような指標で2つに分割するのか(例えば銀河の重さを基準とするか、銀河の明るさを基準とするかなど)、どのような割合で2つに分割するのか、という検出可能性に深刻な影響を与える不定性が問題となる。 本研究は原点に立ち返り、そもそも1つの銀河カタログを2つに分けることなく内在する情報を有効活用し、銀河同士の相関とは異なる双極子的非等方性を重力の新プローブとして利用するための理論を整備し、次世代観測に備えることを目的として研究を遂行した。 特に銀河カタログに内在する情報として、研究計画にも記載した、銀河の形状に着目した非等方性に関する研究を遂行した。そこで着目したのが原始磁場である。原始磁場とは、星や銀河が作られる以前から宇宙論的機構によって極初期に生成されたと考えられる磁場である。原始磁場が存在すると、ベクトル型ゆらぎと呼ばれる回転に対応するゆらぎが作られる。このベクトル型ゆらぎは銀河の形状に影響を及ぼすため、銀河の形状の相関をとることで、初期の磁場の情報を引き出すことができることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀河カタログに内在する情報の代表として、銀河の形状に関する相関関数の非等方性に着目して研究を遂行した。銀河の形状と宇宙初期に生成された原始磁場との関係を明らかにし、その非等方性を利用した検出可能性・原始磁場の振幅の制限などを明らかにした。本論文はすでに投稿し、出版済みである。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、銀河カタログに内在する情報として、銀河クラスターに着目し、銀河クラスターと銀河の相関に現れる非等方性の解析的理論モデルの構築を目指す。この解析的モデル構築は、シミュレーションの結果と詳細に比較しながら遂行する予定である。ただし、シミュレーションでは銀河ではなく暗黒物質ハローと呼ばれる暗黒物質の集まりからなる天体であるため、すぐさま現実の観測と比較するのは困難である。しかし、暗黒物質ハローにおける極めて異なる質量同士の相関を調べることは、銀河クラスターと銀河の相関を観測した時の定性的な振る舞いを理解する上で極めて重要であり、優先的かつ実現可能な課題としてまず取り組む。
|