研究課題/領域番号 |
23K19051
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
笠置 歩 立教大学, 人工知能科学研究科, 助教 (60982501)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ハイパー核 / 機械学習 / 原子核乾板(エマルション) / ストレンジネス / 高速処理 / 画像処理 |
研究開始時の研究の概要 |
荷電粒子を記録できる特殊な写真フィルム・原子核乾板は顕微鏡によって数十μmの飛跡しか残さず、100億分の1秒で崩壊する"ハイパー核事象"を観測できる唯一の検出器である。原子核乾板では1事象ごとに解析・質量測定が可能だが、画像中の大量の背景事象から目的事象を探し出す必要があり、ハイパー核の大量検出には膨大な時間がかかってしまう。そこで本研究ではニューラルネットワークを駆使した高速画像処理モデルを開発し、ハイパー核事象を撮影と同時にリアルタイム検出する手法を確立する。独自の軽量ネットワークによる探索で数年以内に様々なハイパー核を大量検出し、質量精密測定を目指す。
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研究実績の概要 |
深層学習を用いた原子核乾板顕微鏡画像解析によるハイパー核事象検出について、従来手法に対する優位性を検証した学術論文を出版した。論文でまとめた内容は本研究計画における基礎的な検証となっており、現在進めている開発の礎となるものである。また開発内容や技術に関わって国際ワークショップにおいても招待講演を行なった。その他、国内での研究会などに参加することで多くの研究者と議論し、原子核乾板によるハイパー核解析でどのような物理の知見を得られるかについて考察を深め、研究計画の具体化を進めている。 現在は本研究計画の目標である「ハイパー核事象高速リアルタイム検出」に向けて、本研究費で整備した専用GPUサーバーを用いて軽量高速な深層学習モデル開発を進めている。モデルの選定については立教大学のみならず、理化学研究所の研究者らと設置されている原子核乾板読み取り装置を用いて実際に取得した画像データに対して最適化するため、協力して開発を進めている。また、深層学習による処理結果から飛跡の情報を抽出するアルゴリズムの整備を行なっている。これらのアルゴリズムは岐阜大学工学部の画像処理専門家らと議論することで進めており、従来型の画像処理での膨大な処理時間を機械学習による効率的なノイズ除去で削減することによって研究目標を達成するための検証が行われている。開発の具体的な進捗については2024年3月に行われた日本物理学会でも講演した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
開発の基礎となる技術に関連した学術論文を出版することができた。深層学習手法開発のための環境を研究費で整備できたとともに手法の全体概要が固まった。目的である「高速リアルタイム処理」に向けたプロトタイプはおおよそ完成しており、精度と速度を検証するデータセットを作成し、学術論文としての発表を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
現在開発を進めている深層学習と画像処理を組み合わせた荷電粒子飛跡・ハイパー核事象の再構成技術はシミュレーションを用いて精度や速度、検出効率・ロバスト性の観点から定量的に調べることができる。これらの評価を行った後、実データに存在する複数の種類のハイパー核事象や飛跡に対して適用して検証する。成果は技術論文としてまとめ、得られる物理解析の結果についても別途学術論文や国際会議での発表にて公開し、原子核乾板によるハイパー核研究の新しい標準解析手法として確立を目指す。
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