研究課題/領域番号 |
23K19056
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0203:素粒子、原子核、宇宙物理学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
土肥 明 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 基礎科学特別研究員 (90981225)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 中性子星 / 状態方程式 / X線バースト / 超流動 / 超新星 |
研究開始時の研究の概要 |
近年の中性子星の質量・半径の観測の進展により、中性子星のコアに関する状態は制限されつつあるが、クラストに関してはあまり観測的制限がなかった。しかし近年、超新星1987A内の中性子星やいくつかのトランジェントの光度もX線観測装置の向上に伴い測定されるようになった。本研究では、クラストに存在する物質がどのようなものであるかという課題を、近年の光度の観測によって解明することを目指す。具体的には、中性子超流動を含む物性・原子核理論に基づいて構築されたモデルを、申請者がこれまで開発してきた計算コードで光度を系統的に計算し、上記の中性子星光度の観測との比較によって物性・原子核理論の検証を行うことを目指す。
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研究実績の概要 |
これまでの中性子星の進化計算は、ゼロ温度の中性子星の構造を仮定していたが、本研究では、まず、従来使ってきた中性子星進化コードを改良し、中性子星の構造も含めて有限温度化させることに成功した。また、任意の初期の温度プロファイルから熱的計算を行えるようにもした。その後、中性子星クラスト内部の中性子超流動の揺らぎが、観測される光度に反映されるかというのを調べた。揺らぎの効果は、中性子星の比熱を高温領域で上げる傾向にあるため、従来の平均場理論の結果と比べて光度が上がる可能性がある。揺らぎの効果を改良した進化コードに取り入れて単独中性子星の光度の計算を行い、結果として、温度が高い初期の中性子星で揺らぎの効果が現れうることがわかった。また、中性子星である可能性が近年高まっている超新星1987Aの中心天体、NS 1987Aに関しても揺らぎの効果が現れそうかを調べたが、揺らぎの効果に関しては現れなかった。一方、中性子星クラスト内部で存在すると思われるイオンに関して、その比熱がNS 1987Aに大きく影響することもわかった。他にも、規則的なX線バースト天体1RXS J180408.9-342058のモデル計算や、現実的な冷たい原始中性子星の温度プロファイルから始めた若い単独中性子星の熱的進化に関しても、改良した進化コードを用いて計算した。前者に関しては、X線バーストの再帰時間とパーシステント光度の観測だけで中性子星コアのEOSが制限できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来用いてきた中性子星進化コードを有限温度化できたことで、様々な中性子星の温度観測を調べられるようになったことが本年度の重要な進展である。その応用先として、中性子超流動の揺らぎによる中性子星の光度の影響、X線バースト・若い中性子星の光度のEOS依存性を調べたが、最初のテーマに関してはすでに結果を論文にまとめている段階である。加えて、X線バーストに関する論文はすでに査読付き原著論文として出版された。したがって、現在のところ本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
中性子星クラスト内部の中性子超流動の揺らぎを取り入れた単独中性子星の計算結果をまとめ、論文にしていく。また、降着中性子星に関しても近年、中性子超流動の比熱の重要性が指摘されているので、揺らぎの効果が現れそうかを検討する。若い中性子星の光度のEOS依存性に関しては、コアよりもクラストの温度の方が、熱が早く伝わるために重要であるとされているので、クラスト内部の温度構造のを細かく調べて、EOSによる光度の違いの原因を調べていく予定である。
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