研究課題/領域番号 |
23K19065
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
笹木 晃平 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (90977802)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 硫黄同位体比 / 二次イオン質量分析計 / 太古代 / ピルバラクラトン / 黄鉄鉱 / 硫酸還元菌 / 硫黄同位体 |
研究開始時の研究の概要 |
生命進化史の中で最も古い時代から活動していたと考えられる硫酸還元菌がいつから存在していたかを探究することは,生命がいつ誕生し,どのように進化してきたか?に直結する.一般的に硫酸還元菌の痕跡は硫黄同位体比異常を持った黄鉄鉱として岩石に記録される.これまでの申請者の観察で,オーストラリア・ピルバラクラトンの約34億年前の堆積岩から硫酸還元菌の関与が疑われる多様で微小な黄鉄鉱が発見された.本研究ではこの微小黄鉄鉱形成への硫酸還元菌の関与を検証するために微小黄鉄鉱の硫黄同位体比分析法の確立を目指す.そしてその分析法を世界最古級の34億年前の堆積岩中の微小黄鉄鉱に適用する.
|
研究実績の概要 |
初年度の太古代西オーストラリア・ピルバラ地域の地質調査は実施できなかったものの,すでに調達済みの試料を利用し,黄鉄鉱の産状を下にした分類,基礎データの取得を行なった.黄鉄鉱そのもの単体で存在しているもの,微化石と共存し存在するもの,シリカ熱水脈付近に存在するもの,自形または球形のもの,など産状で分類可能であり,本来認識されていた以上に黄鉄鉱形成プロセスの複雑性が見出された.またそれら黄鉄鉱を電子線プローブマイクロアナライザーによって元素組成分析を行い,黄鉄鉱の主成分元素に加え,AsやSbといった熱水に関連した元素が濃集していたことから硫黄源として熱水が考えられた.NanoSIMSを用いた局所硫黄同位体分析法の開発を進め,スタンダードを用いてその方法で安定したデータが得られるところまで確立した.開発したこの手法で分類した黄鉄鉱の硫黄同位体比分析を進め,黄鉄鉱粒子間の差異,粒子内での不均質が見出された.また見出された値からは硫酸還元菌の寄与が考えられえた.この成果をまとめて論文投稿準備を進めている.国内学会における成果報告も予定しており,すでに投稿・発表採択済みである. もう一つの分析手法に関して,元素イメージング後にデータ処理によって同位体比マップを得る方法(イメージング法)の開発も進めている.均質な黄鉄鉱スタンダードを用いたテスト分析は順調に進んでおり,予想されるようなデータが得られている.サンプルにおいてこれを実施し,確立を目指す.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度には地質調査を行うことができなかったが,すでに今年度の西オーストラリア・ピルバラ地域の地質調査計画が進行しており地質調査・試料調達は可能になる予定である. 太古代の西オーストラリアの堆積岩中の黄鉄鉱の分類について,現在はすでに入手したスティルリー・プール層及びファレル珪岩層堆積岩の薄片を作成し光学顕微鏡観察を進めている.複数のサンプリングポイントで採取された岩石について薄片観察が行われ,保存性の高いものを選定し,その中の黄鉄鉱を形態や産状で分類した.その中には微化石との共存状態,形状,熱水脈との位置関係でいくつかの産状に分類が可能だった. NanoSIMSを用いた黄鉄鉱に対する局所硫黄同位体分析手法について,スポット分析によって直径数ミクロンの黄鉄鉱を打ち分ける手法は確立され,微小黄鉄鉱粒子間の差異が見出された.また粒子内での不均質が見出される場合もあり生成過程の複雑さが見出された.またこれらの硫黄同位体比は微生物的硫酸還元の影響を受けている可能性が高いことが見出された.測定予定サンプルはおよそ半数が分析済みであり,分析条件が確立されたので,これからはよりスピードアップ可能である.イメージング法についてはスタンダード分析とサンプルの測定が現在行われており,分析条件とデータの補正に関しての検討が行われている. ラマン分析・元素分析も適宜進められており,必要な基礎データも集まりつつある.これらよりおおむね順調に進行していると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
次年度はまず西オーストラリア・ピルバラ地域の地質調査を行い,地質調査と試料採取を行う.サンプリングポイントを増やし,微化石及び黄鉄鉱を含むサンプルを集め,それらの分布域を明らかにする.黄鉄鉱に関して分類と硫黄同位体比分析を実施しその生成環境と硫酸還元菌の寄与について考察を進める.イメージング手法の開発を進め,微小黄鉄鉱粒子内での数ミクロンスケールでの硫黄同位体比の相対値の違いを可視化することを目指す.
|