研究課題/領域番号 |
23K19075
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 千葉県立中央博物館 |
研究代表者 |
菊川 照英 千葉県立中央博物館, その他部局等, 研究員(移行) (30981360)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 保存ポテンシャル / 生痕化石 / 珪質微化石 / 放散虫化石 / 付加複合体 / 圧密・続成作用 / タフォノミー / 炭酸塩コンクリーション / 微化石保存ポテンシャル / 微化石 / 放散虫 |
研究開始時の研究の概要 |
層序や地質構造が著しく変形した付加複合体やその被覆層から成る地質体の解明には、放散虫といった微化石による地層の年代決定や対比が強力な支援ツールとして用いられてきた。一方で、堆積後の削剥作用や埋没後の圧密・続成作用によって微化石の保存状態が悪化することで、層序や構造の把握を十分行えない例もある。本研究ではこのような問題に対し、古第三系から新第三系における、生痕化石による微化石保存ポテンシャルの解明を目的とする。すなわち、生痕内外における放散虫化石の①保存状態、②群集組成、③地質年代精度の比較及び、生痕内部の微化石分布パタンを把握し、生痕化石による付加複合体地質研究への有用性を明らかにする
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研究実績の概要 |
本研究では、圧密・続成作用が進行した堆積物から保存良好な微化石を抽出し地質学的に応用するための手段として生痕化石(特にTasseliaという多毛類の生痕)に注目する。そして、生痕化石内外に保存される珪質微化石(特に放散虫化石)について、①保存状態、②群集組成、③地質年代精度の3点を比較する。また、生痕内部における微化石保存パタンを観察する。これらの結果から生痕化石の微化石保存ポテンシャルを解明する。 当該年度は、種子島熊毛層群の漸新統、房総半島三浦層群の中-上部中新統、三浦半島葉山層群の中部中新統、そして房総半島保田層群の下部中新統から生痕化石と泥岩試料を採取した。これらの内、熊毛、三浦、葉山層群の試料の酸処理を行い微化石を抽出した。また、高精細SEMによる生痕化石断面スラブの観察と保存状態の可視化を行った。 検鏡は熊毛層群と三浦層群の試料について完了した。その結果、①生痕内部に保存される放散虫化石は、外部のものと比べて非常に繊細な部位が残っていること、②放散虫化石の種の同定に必要な微細構造がより保存されているため、生痕内部の方がより種数が豊富なこと、③年代決定に有効な放散虫化石種や化石帯を定義する種が生痕内部により多く保存されている、といった3点が明らかとなった。また、生痕化石断面スラブの観察により、生痕の特定部位に保存良好な微化石が多く保存されていることが判明した。これは、生痕の形成過程が微化石の保存状態に影響している可能性を示唆する。さらに、三浦層群の試料からは、未記載の放散虫化石種が多数産出した。通常、保存良好な放散虫化石は深海のコア試料から得られ、陸上の圧密・続成が進行した地層から保存良好かつ未記載種を含む放散虫化石群集が見つかることは稀である。以上の結果から、生痕化石は地質・層序・年代学的に重要であるだけでなく、未知の微古生物学的データを提供できる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は(a)種子島熊毛層群の漸新統の試料処理と検鏡作業、(b)房総半島三浦層群の中-上部中新統の試料処理と検鏡作業、(c)三浦半島葉山層群の中部中新統の試料処理及び検鏡作業、(d)房総半島保田層群の下部中新統の野外調査並びに試料採取、(e) 室戸半島層群の始新統の試料採取のための下見調査を計画していた。 このうち、(a)、(b)、(d)、(e)については順調に調査・研究を実行できた。特に(a)については良好な結果が得られたことから、その成果を国際誌(Revue de Micropaleontologie)に投稿し受理・出版された。また、(b)についても良好な結果が得られており、その内容の一部を日本地質学会2023年京都大会で公表した。さらに現在、国際誌で査読プロセスが進行中である。(d)、(e)についても順調に進んでおり、次年度に試料の採取・処理・検鏡を行う予定である。一方で(c)については、検鏡作業が完了しきらなかった。この原因は、検鏡のために購入予定であった顕微鏡メーカーから年度内に納入不可能であったことと、年度内に納入可能な顕微鏡メーカーを探し出し購入するまでに予想以上の時間が必要であり作業が後ろ倒しになったこと、の2点である。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度において完了しきらなかった三浦半島葉山層群の中部中新統の試料の検鏡作業を優先して実行する。この作業は当該年度末までに開始できているので、大きな研究計画の変更は不要である。これに加えて次年度では、研究計画通りに、(f)房総半島保田層群の下部中新統の試料処理及び検鏡作業、(g)室戸半島層群の始新統の野外調査と試料採取・処理、検鏡作業、の2点を実行する予定である。 上記の(f)、(g)の結果についても、生痕化石内外に保存される放散虫化石の①保存状態、②群集組成、③地質年代精度の3点を比較する。また、生痕内部における微化石保存パタンを観察する。これらと今年度の成果から、古第三紀から新第三紀の試料を比較し、時空間的に異なる試料間の斉一性について検証し、生痕化石の微化石保存ポテンシャルの解明、そして生痕化石の地質・層序・年代・微古生物学的重要性を実証する。 なお、今年度及び次年度の成果に関しては、日本地球惑星連合(JpGU)2024年大会及び日本地質学会2024年山形大会で一部を公表予定である。また、現在査読プロセスが進行中である国際誌に投稿した論文についても次年度内に受理予定である。
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