研究課題/領域番号 |
23K19083
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0204:天文学、地球惑星科学およびその関連分野
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研究機関 | 公益財団法人高輝度光科学研究センター |
研究代表者 |
岡 健太 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, テニュアトラック研究員 (70983740)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
中途終了 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 金属水素 / 木星 / 高温高圧実験 / 電気抵抗 / ダイヤモンドアンビルセル |
研究開始時の研究の概要 |
木星の内部は非常に高圧・高温で、主成分である水素ガスが金属性の流体に変化すると考えられている。これまで、瞬間的に木星の内部条件を再現する衝撃圧縮実験により金属水素の探索がなされてきたが、測定される金属化温度・圧力には大きな誤差があった。本研究ではより圧力温度安定性に優れたダイヤモンドアンビル装置を使い、水素を100万気圧・3000℃を超える極限状況まで加圧・加熱し、電気抵抗測定によって水素が金属化する条件を探る。
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研究実績の概要 |
水素貯蔵材料であるアンモニアボランをダイヤモンドアンビルセル高圧装置内で加圧した後、高圧下でレーザーによって加熱されたアンモニアボランから放出された水素の電気伝導度を測定する実験を行った。この実験により、以下2つの顕著な結果が得られた。 (1)70~120万気圧/1500~3500ケルビンの広い温度圧力領域で、水素の電気伝導度を複数回にわって測定することに成功し、温度を上げるほど電気伝導度が上がることが確認された。このことから、上記の温度圧力領域では水素は絶縁体(半導体)的な性質を持つことが確認された。また、温度上昇による電気伝導度上昇率の増加が明瞭に観察されたことから水素が分子絶縁相から半導体的な中間相へ変化する現象を捉えることにも成功した。 (2)125万気圧/4000~4600ケルビンにおいて温度を徐々に上げながらの電気抵抗測定に一回成功し、昇温中に電気伝導度が増加から減少に転じた。これは、水素が半導体的な中間相から金属相へ変化したことを示していると考えられる。 (1)は衝撃圧縮実験による先行研究で存在が示唆されていた、半導体的な中間相の存在を確認するものであり、(2)はこれまで衝撃圧縮中の反射率測定など間接的にしか観察されていなかった水素の金属相への相転移境界の存在を確認するものである。いずれも、ダイヤモンドアンビルセルのような静的圧縮装置による観察は世界初である。 今後、より幅広い温度圧力領域で水素の相転移境界を決定することができれば、木星マントルの深部における水素の状態変化を精密に予測することが可能になり、木星の内部構造推定に強力な制約を与えることができると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の主な目的は、分子水素が絶縁体-金属相転移する境界の温度圧力を決めることと、相転移が金属への直接の相転移であるか半導体の中間相を介するのかを調べることの2点であった。現時点で、後者の目的についてはすでに達成された。前者についても絶縁体-金属相転移を、限定的な条件下ではあるものの、重要な結果を得ることができた。また、研究計画当初は100万気圧/4000ケルビンまでの測定を想定していたが、それを上回る125万気圧/4500ケルビンまでの測定を実施できたことから、本研究の当初の計画よりも順調に研究が進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、水素の金属化と思しき実験結果を得られた実験点は1点に留まっている。今後は、同様の実験手法を用いてより広い温度圧力範囲において水素の金属相転移を観察し、相転移境界線を木星の内部条件まで拡張することを目標とする。 現在までの実験から、水素が高温高圧下において半導体相や金属相に相転移すると、水素の反応性が非常に高くなり、数秒ほど加熱しただけでも容易に電気抵抗測定用電極と反応して回路のショートを引き起こすことが確認された。そこで、今後は1秒間の間に温度を連続的に変化させることで、水素が電極と完全に反応してしまう前に金属相転移を観察する工夫を行いたいと考えている。
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