研究課題/領域番号 |
23K19086
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0301:材料力学、生産工学、設計工学、流体工学、熱工学、機械力学、ロボティクス、航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西 駿明 東北大学, 工学研究科, 助教 (50978129)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ソフトマテリアル / 摩擦 / 濡れ性 / 高摩擦 |
研究開始時の研究の概要 |
手指やゴムなどソフトマテリアルは,適度に濡れることで乾燥時よりも高摩擦を示すことがあるが,メカニズムは未解明である.繊維構造体(紙や布など)や連続気泡構造体(スポンジなど)といった水が内部にも含侵しうるソフトマテリアルでは,水が接触界面に留まらず材料内部を含めた3次元空間に分布することが想定される.そこで本研究では,水が3次元的に分布する場合におけるソフトマテリアルの摩擦挙動解明を目的に,濡れた紙の摩擦に及ぼす含水量の影響を体系的に解明するとともに,水分布を可視化し,高摩擦発現メカニズムの解明を行う.さらに,この高摩擦効果を制御する設計指針の確立に挑戦する.
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研究実績の概要 |
一般的に適度に濡れた手指は,乾燥時よりも高い摩擦を示すため,例えばビニル袋の開口部を広げる際には,手指を意図的に湿らせることが多い.この高摩擦効果は,接触界面に水が不均一に分布することが要因であると考えられるが,メカニズムは未解明である.本現象は手指に留まらず,ゴムなど他のソフトマテリアルの摩擦でも見られる.繊維構造体(紙や布など)や連続気泡構造体(スポンジなど)といった水が内部にも含侵しうるソフトマテリアルでは,摩擦時に水が接触界面に留まらず材料内部を含めた3次元空間に分布することが想定される. そこで本研究では,摩擦時に水が3次元的に分布する場合におけるソフトマテリアルの摩擦挙動解明を目的に,濡れた紙の摩擦に及ぼす含水量の影響を体系的に解明するとともに,水の分布を可視化し,高摩擦効果のメカニズム解明を行う.さらに,これらの知見に基づき,濡れたソフトマテリアルの摩擦制御を可能とする設計指針の確立に挑戦する. 令和5年度は,上述の実験を可能とする装置の完成を目標としていたが,年度内に装置を完成し,実験を開始した.結果,紙はわずかに水を含むことによって乾燥時よりも高摩擦を示すことが確認され,その高摩擦効果はある一定量の水を添加した際に最大化した.さらに,本高摩擦効果は,低荷重・高すべり速度条件時により顕著となった.本研究成果は,学術論文1報,国内学会での口頭発表2件,ポスター発表1件を通して発表した. 令和6年度は,濡れた紙とガラスの摩擦における材料条件( 紙の厚さ,密度,濡れ性,繊維長さ・太さなど)の影響を体系的に解明し,水濡れ時の繊維状構造体の摩擦制御のための設計指針を確立する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
令和5年度は,上述の実験を可能とする装置の完成を目標としていたが,年度内に装置を完成し,実験を開始した.具体的には,濡れた紙とガラスの摩擦における摩擦力測定と同時に,接触界面における水の分布を可視化するための装置を作製し,摩擦試験を実施した.この時,摩擦条件(含水量,垂直荷重,すべり速度)を変化させた.ここで,水に青色光を吸光し緑色光を発光する蛍光物質を添加した上で,接触界面に青色光を入射し,緑色光をカメラで観察することで水の平面分布を可視化した. 得られた結果としては,紙はわずかに水を含むことによって乾燥時よりも高摩擦を示すことが確認され,その高摩擦効果はある一定量の水を添加した際に最大化した.さらに,本高摩擦効果は,低荷重・高すべり速度条件時により顕著となった.本摩擦効果は,紙内部に点在する水滴の周囲に存在するメニスカスによって発生した負圧によって,紙とガラスの接触界面に形成される真実接触部が増加・拡大した結果であると考えられる. 本研究成果は,学術論文1報,国内学会での口頭発表2件,ポスター発表1件を通して発表した. 以上の進捗状況より,当初の計画以上に進展している.
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今後の研究の推進方策 |
紙の摩擦における摩擦力と水分布の関係から高摩擦効果のメカニズムを解明する.現状の仮説としては,不均一な潤滑下では紙とガラスの界面に無数の水滴が形成され,その水滴内の水圧が負圧になることで,紙とガラスに引力が発生し,高摩擦が発現すると考えている.この負圧は水滴形状や紙・ガラスの濡れ性により決定されると想定される. 令和6年度は,実験結果に基づき,この仮説を実証する.さらに,濡れた紙とガラスの摩擦における材料条件( 紙の厚さ,密度,濡れ性,繊維長さ・太さなど)の影響を体系的に解明し,水濡れ時の繊維状構造体の摩擦制御のための設計指針を確立する. すでに材料が親水性の場合では,含水による高摩擦効果が発生する一方,疎水性の場合では高摩擦効果が発生しないことが実験的に明らかになっており,上述の仮説の妥当性が示されつつある.さらに,材料設計の観点から本高摩擦効果を制御できる可能性が示唆されている. 完全な仮説実証のためには,水の平面分布だけではなく,垂直分布の可視化が必要になるが,現状の実験手法では達成できない点が課題である.令和6年度は,実験手法を改良するべく,多色の光(赤・緑・青色光)を用いた観察手法を確立することで,本研究の完遂を目指す.
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