研究課題/領域番号 |
23K19089
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0301:材料力学、生産工学、設計工学、流体工学、熱工学、機械力学、ロボティクス、航空宇宙工学、船舶海洋工学およびその関連分野
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
木山 景仁 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (80981589)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 水中衝撃波 / キャビテーション / 流体力学 / バイオミメティクス / FSI |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,水中衝撃波を減衰・緩和し,それに伴うキャビテーションの発生をも抑制する機構の開発に向けて,取り組むものである.流体力学的な観点に加え,テッポウエビが頭部に有するとされる特異な機構を理解しようとすることを通して,より効率的な水中衝撃波減衰・緩和機構を開発しようとする.研究手法としては,短パルスのレーザーを水中に照射し,精度よく水中衝撃波およびキャビテーションを形成する装置を構築する.これに加えて,生物構造を理解しようとする試みを通して試作する流体デバイスを設置し,その効果を定量的に議論しようとするものである.
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研究実績の概要 |
本研究では,最終的に生物模倣による,水中にて圧力波をよく減衰する柔軟壁面様の流路を作成し,実験的に調べることを目指している.その前駆段階として,今年度は,(1)レーザー集光により水中衝撃波を生成および計測する装置の確立,(2)流路壁としての柔軟界面の選定・特性把握,および(3)衝撃波計測実験を実施する条件の策定,に取り組んだ. (1)について,現在までのところ,水中衝撃波を安定して生成し,それを計測する実験装置のセットアップを完了した.水中衝撃波圧力を計測したところ,気泡(レーザー集光点)より十分離れた領域では,よく知られている距離に反比例する減衰が確認された.また,気泡発生の繰り返し性もよく,サイズにして数パーセントに抑えられている. (2)について,柔軟素材を活用した流路設計に向けて,多種の柔軟素材の剛性計測装置や,柔軟界面前後での衝撃波の透過・反射圧力計測を実施し,着実に実験データを蓄積している.また,極端な例として,気泡-気泡間の相互作用の検討も行った.一方で,水面付近で水中衝撃波を反射させ,キャビテーション気泡を発生させるには至っておらず,今後リフレクタの設計等,さらなる検討を要する. (3)について,柔軟界面近傍にキャビテーション気泡および衝撃波を発生すると,気泡の挙動が変化し,したがって気泡崩壊後に発生する衝撃波の強さが変化することが示唆されている.材料の剛性と,材料と集光点との距離をパラメータとして実験を行ったところ,衝撃波強さの顕著な減衰が確認される一定の条件を見出した.今後の実験条件策定においては,気泡発生時の衝撃波を利用する予定ではあるが,二次衝撃波を用いる場合は,この閾値より十分遠い条件で実施することが必要となる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,研究実績の概要に示した三つの観点について検討する. (1)については,順調に進展しており,より詳細な実験に向けて追加の整備を行っている. (2)については,おおむね順調に進展している.柔軟材料の剛性計測に関する議論は論文(Kiyama, et al., Phys Rev Fluids, 2024)に大いに貢献している.また,気泡-気泡間の相互作用に関する知見も論文(Terasaki, Kiyama, et al., Phys Fluids, 2024)の議論に貢献している. (3)については,当初計画に想定しなかった興味深い現象が複数見出されている.そのうちの一部の予備的な知見を,最近,2023年度衝撃波シンポジウムにて報告した(木山ら,2024).当初の実験計画に照らしても,重要な示唆が得られており,計画した以上の進展が見られている. 一方で,衝撃波の可視化については,次年度に計画していた機材のレンタルを実施した.この点は,計画を前倒しした点で進展しているが,得られた画像が想定したレベルには達していない.また,テッポウエビの殻の計測において,これまでのところ十分な結果が得られていない.これは,装置の制約だけでなく,生体の行動についても計画の最適化が必要である.以上のことから,一部は進展しているものの,そうでない点も見受けられるため,総合して(2)おおむね順調に進展している,とした.
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今後の研究の推進方策 |
以上のことから,レーザー誘起衝撃波・気泡と,柔軟界面との相互作用という基礎的な流体実験系については順調に進展しており,今後も現状の方針を継続する.ただし,衝撃波の可視化については,当該レーザー光源装置を購入の上,現有の高速度カメラとの間で撮像結果のクオリティを向上させる手立てを検討する必要がある.現状では,短時間のテストで十分に原因の洗い出しができていないため,光学系の改良も含めて検討する.一方で,高速度カメラの上位機種のレンタル等も予算状況を勘案の上柔軟に検討する. 次に,テッポウエビの殻の計測については,現有の光学顕微鏡ではこれまでのところ十分な計測ができていない.しかし,これは脱皮の頻度が想定より少ないことも原因と考えられる.現在はテッポウエビを管理する環境が整い始めた段階であり,今後飼育頭数を増加することで,ある程度の改善が見込まれる.維持環境を柔軟に見直し,改善を図る. しかし,上記の課題はあるものの,実験データの蓄積という観点では順調に推移しており,次年度には国際学会での複数演題の提供,および前駆段階のデータをもとに論文投稿を実施できる見込みである.国内学会での発表と合わせ,当初予定よりも活発な成果発表を行える見込みであるため,予算の推移を勘案しながら実施していく.
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