研究課題/領域番号 |
23K19109
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0302:電気電子工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸井 幸博 東北大学, 電気通信研究所, 特任研究員 (80978156)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | スピントロニクス / スピン軌道相互作用 / ワイル半金属 / スピントルク / ナノデバイス |
研究開始時の研究の概要 |
近年注目を集めているワイル半金属(トポロジカル物質の1つ)を用いたスピン軌道トルク磁化反転を、これまで研究されていなかったナノサイズの試料にてナノ秒の時間スケールで測定し、その物理的性質、機能性を明らかにする。これまでの研究はマイクロサイズの試料にて長い時間スケールでしか行われておらず、実験に基づく詳細な理解には至っていない。本研究では、実応用が見込まれかつ物理的機構に直接アクセスできるサイズと時間スケールにて特性を評価することで、ワイル半金属の高効率かつ特異な電流・スピン流変換によって実現されるスピン軌道トルク磁化反転の性質と機能性が明らかになる。
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研究実績の概要 |
スパッタリングを用いたワイル半金属の薄膜の成膜条件について評価を行った。初めに、ワイル半金属の単層膜の成膜を行い、組成比を評価し、所望の組成比をもつ薄膜を得るために成膜条件の最適化を行った。特に、2つの元素を交互に成膜する交互スパッタリングでは、片方の元素がほとんど積層されないことが確認されたため、2つの元素を同時に成膜するスパッタリングを用いることにした。続いて、ワイル半金属/強磁性金属の2層膜の成膜を行い、アニール条件を変えながら磁気的および電気的な特性の評価を行った。その結果、作製した薄膜は、強磁性金属の熱処理に必要な300℃程度のアニールに対して耐性がないことが分かった。そこで、ワイル半金属/常磁性中間層/強磁性金属の3層膜へと構造を変更して、同様な評価を行った。すると、常磁性中間層の膜厚が一定以上の場合には、先述のアニールに対しての耐性が確認された。これは、ワイル半金属を構成する元素の一部が熱処理によって移動していたのが、常磁性中間層によって阻害されたためだと考えられる。この片方の元素が移動しやすい性質は、初めに述べた交互スパッタリングにおける問題からも示唆される。さらに、ワイル半金属/常磁性中間層/強磁性金属の3層膜において磁気的な測定を行い、構造の最適化を行った。最終的には、所望の組成比をもつワイル半金属の上に面内と面直のそれぞれの異方性を有する強磁性体金属層をもった薄膜を作製することに成功し、一定程度のアニール耐性も確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、薄膜の成膜条件や構造の最適化を行うことに主眼をおいて研究を行った。初めに、当初想定していたワイル半金属/強磁性金属の2層膜にいて成膜条件や構造の最適化を行うことを目指したが、所望の組成比をもつワイル半金属の上に面内と面直のそれぞれの異方性を有する強磁性体金属層をもった薄膜を作製することができなかった。そこで、ワイル半金属/常磁性中間層/強磁性金属の3層膜へと構造を変更することでこの問題を解決できることを発見し、成膜条件や構造の最適化を行った。その結果、実験を進める上で必要な所望の組成比をもつワイル半金属の上に面内と面直のそれぞれの異方性を持有する強磁性体金属層をもった薄膜を作製することができた。本年度の研究によって、当初に主な目的として掲げていた薄膜の成膜条件や構造の最適化に関しては一定の知見を得ることができ、来年度の計画の遂行に向けて見通しを立てることができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で得られた成膜条件や構造を用いて、スピン軌道トルクやそれに起因する磁化のダイナミクスを評価する。特に、組成比を徐々に変えながら、パルス電流を用いた磁化反転を測定し、微小な定常電流でトルクを評価するハーモニック測定などの結果とも比較しながら、ワイル半金属の多層膜での磁化のダイナミクスを明らかにする。ただし、構造に関しては、当初想定していたワイル半金属/強磁性金属の2層膜からワイル半金属/常磁性中間層/強磁性金属の3層膜へと変更する。
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