研究課題/領域番号 |
23K19132
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0303:土木工学、社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
辻 勲平 東北大学, 工学研究科, 助教 (10984750)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 内部侵食 / 粒子法 / SPH / DEM / 浸透流解析 / 粒子再配列法 / 3D計測 / デジタルツイン / マルチスケールモデリング |
研究開始時の研究の概要 |
地盤の内部侵食は,地盤内部に潜在する弱部を起点に拡大・進展し,土構造物の安定性を奪い,河川堤防の破堤や地盤陥没など,深刻な地盤・浸水被害をもたらす.ただし,現象の局所性や外部観察の困難さから,土粒子と間隙水の相互作用から発現される内部侵食の微視的な素過程は不明瞭である.更に,微視的な内部侵食が地盤全体の巨視的な力学的特性に及ぼす影響も未知な点が多い.本研究では,3次元オペランド計測・実験×数値解析技術を駆使することで,内部侵食デジタルツインを構築し,土粒子規模から土構造物規模までのマルチスケールの視野から,未知の内部侵食現象の素過程と巨視的な地盤へ与える影響等の全貌を明らかにすることを目指す.
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研究実績の概要 |
地盤の内部侵食(地盤内部を流れる浸透流によって微細な土粒子が移動・流失する現象)のメカニズム把握を目的とし,地盤をミクロな視点で観察した際の土骨格とその変形,そして骨格の間隙を流れる流体の流れを再現しうる,流体‐土粒子連成シミュレータの構築を推進した.これには,土骨格をなす土粒子の動きと土粒子形状を直接的に再現するため,個別要素法DEMによる地盤解析および間隙内部を流れる流体の解析には粒子法であるSPH法を採用している.ただし,従来のSPH法による浸透流解析では,SPH法そのものの計算精度の問題や,地盤内部での見かけの流体体積の膨張に伴う体積保存性の悪化が解析手法の大きな課題としてあがった.本年度,本研究では,高次の空間精度を有する高精度粒子法SPH(2)を用いた微分演算スキームを導入し,粒子法の計算精度の向上を実現した.さらに地盤の内外の流体の体積の長期的な保存性能に優れた新たな粒子再配列法(GDPS:一般化密度保存型粒子再配列法)を開発している.これらの要素技術を併用した高精度浸透流解析は,従来のSPH-DEMによる流体-地盤連成解析に比べ,圧力計算の安定性や体積保存性能が著しく改善しており,当初の目的であった内部侵食解析の精度を向上させうるものだと考えられる. 次年度以降,ギャップのある粒度分布を有した地盤の土骨格数値モデルを作成し,提案する高精度浸透流解析を実施することで,地盤内部で発生する内部侵食数値実験を推進する.さらに,微視的な内部侵食が巨視的な地盤の安定性へ及ぼす影響を推定しうるマルチスケール解析を計画している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたように,高精度粒子法による流体-地盤連成解析ツールの開発・高精度化を行った.また,流体解析における体積保存性能を向上させる新たな粒子再配列法を開発するなど,当初の計画にはなかった新たな計算手法の開発を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
初年度開発を進めた粒子法(SPH-DEM)による高精度浸透流解析ツールを活用し,地盤内部の微視的な領域で発生する内部侵食(特にSuffusion現象)の発生メカニズムの把握と,発生に伴う巨視的な力学的特性への影響(応力-ひずみ関係,限界動水勾配との関係等)の推定を目指す.具体的には,現実の地盤内部の土骨格を反映した数値間隙モデルを作成し,提案する高精度浸透流解析を実施することで,地盤内部で発生する内部侵食数値実験を行う.なお,数値解析の妥当性を検証すべく,内部侵食の室内実験との比較を検討している. 主な技術開発としては,スーパーコンピュータもしくはGPGPUを活用した大規模計算機能の開発と,微視的な内部侵食が巨視的な地盤の安定性へ及ぼす影響を推定するため,均質化法を援用したマルチスケール解析技術の基盤形成を行う予定である.
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