研究課題/領域番号 |
23K19139
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0303:土木工学、社会システム工学、安全工学、防災工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
吉川 友孝 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 助教 (00984600)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 資源循環 / 植物繊維 / 鉄鋼スラグ / 地盤改良 / 地震時挙動 / SCP改良地盤 / 遠心模型実験 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,鉄鋼スラグに木質繊維を混合した材料をSCP材として利用した際の地震時地盤挙動を解明することを目的に,SCP改良した軟弱地盤に対し,遠心模型振動実験を行う.特に,模型実験の結果から実物の挙動を推定する際に用いる相似則の適用性について,二次元有限要素振動解析の結果と比較して検討する.遠心模型振動実験は予備圧密,50G場の遠心力場で自重圧密を行い作製したカオリン粘土地盤に凍結した鉄鋼スラグ杭またはFS杭を埋設し,改良条件の違いが軟弱地盤の地震時挙動に及ぼす影響を解明する.また,二次元有限要素振動解析を行い,既存の相似則の評価と新たな相似則の提案を行う..
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研究実績の概要 |
模型実験を実施する前に,本研究材料を杭として使用した場合の曲げ特性を把握することは重要である.鉄鋼スラグ水和固化体(製鋼スラグと高炉スラグ微粉末を質量比96対4で混合したもの,SSHM)と,SSHMに繊維状木屑を体積比で10%混合した材料(SSHM-FWC10)で作製した円筒杭(直径25mm,高さ200mm)に用いて曲げ実験を実施し,曲げ特性を比較評価した.本研究材料は微固結した粒状材料であることから,水平方向に供試体を据えて,曲げ実験を行うことが困難である.そこで鉛直方向に配置した供試体に対し,水平荷重を作用させて曲げ実験を行った. 曲げ実験を行うにあたり,以下に示す2つの課題を解決する方法を検討した.まず杭の作製方法について検討した.その結果,杭は通常の供試体作製のように5層で突き固めて作製すると,層間でせん断が発生する可能性があることが分かった.これは杭径に対して粒径が大きいためと考えられる.1層突き固めで杭を作製することで本問題は解決でき,杭作製の再現性を確保できることが分かった. 次に,曲げひび割れ発生時の強度を算出するためには杭が単純梁のようにふるまう実験系が望ましいと考えた.そこで両端部に適度な荷重を作用しつつ,支店間で単純梁となるような実験方法を検討した.その結果,供試体の上部に3kg(62kPa)の荷重を作用させることで,支点間が単純梁としてふるまうことが分かった. このようにして曲げ実験を行った結果,SSHMとSSHM-FWC10の曲げ特性は明らかに異なり,最大曲げ応力はSSHMの方が高いものの,最大曲げ応力後の応力低下はSSHM-FWC10の方が明らかに大きいことが明らかとなった.ただし,本曲げ実験は円柱供試体の側面に円形の載荷軸が接するように水平荷重を作用させた.つまり応力集中が発生していた可能性があることから改善し次第,定量評価を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時は令和5年度に遠心模型実験を行うことを想定していた.しかし,大学の移設(遠心装置移設)や模型実験を行う前に杭単体の曲げ特性を把握することが重要であるという考えから,令和5年度は曲げ実験を実施した.実績概要に記載したように,実験は想定以上に様々な課題があり,杭供試体の作製方法を始め,曲げ実験手法の確立において,実験初期よりも検討事項が多くなった.しかし,令和5年度の実験過程および結果から得られた多くの知見を模型実験の実施前に得られたことは,この後に実施する模型実験の再現性確保のためにも有益な知見であったと考えている.以上より,当初想定していた実験は出来なかったものの,その前準備として重要な知見を数多く得られた.
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度の曲げ実験の反省点として水平荷重作用部を点荷重にしたことである.杭が曲げ破壊した後に載荷点で軸の食い込みが確認できる.軸の食い込みよりも前に曲げ破壊が見られることから点荷重の影響はほとんど無視できると考えられるものの,厳密な議論のためには載荷部に集中荷重が作用していた本実験結果を再考する必要がある.そこで本年度は昨年度に引き続き載荷部に面荷重を作用させて曲げ実験を行う.また,曲げ実験を杭の直径に対して繊維状木屑の直径が大きすぎると想定するような木屑の繊維補強効果が期待できない可能性がある.そこで木屑の繊維径を可能な限り小さくして再実験する.これらを解決後,本研究材料の曲げ特性を定量的に評価する.本曲げ実験はプレストレスコンクリートの曲げ実験に似ていることから同様の方法で最大曲げ応力の算出が可能であると考えている. さらに,軟弱地盤中に杭を打設し,50G場で振動模型実験を行う.特に,繊維状木屑の有無,杭径,杭置換率による地震時挙動の違いを定量的に評価する.実験中は土圧,水圧,変位の計測,および画像解析用に側面から写真撮影を行う.実験結果から,改良条件の違いが軟弱地盤の地震時挙動に及ぼす影響を解明する. 上記実験と同時に,本研究材料を用いた表層改良効果を明らかにする.とりわけ軟弱砂地盤を対象とした表層改良を行い,サンドコンパクションパイルよりもシンプルな実験条件で本研究材料の地盤改良効果を明らかにする.とりわけ繊維状の木屑の有無が支持力の改善と地盤の沈下抑制に与える影響を明らかにする.
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