研究課題/領域番号 |
23K19155
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0304:建築学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
呉 多英 北海道大学, 工学研究院, 助教 (60976166)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 炭酸化 / CO2吸収 / 合成C-S-H / 乾湿繰り返し / C-S-H / 細孔構造 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、廃コンクリートのCO2促進固定を目的として、全水和物量の半分以上を占める、なおかつ水酸化カルシウムより炭酸化速度の遅いケイ酸カルシウム水和物(C-S-H)のCO2固定効率向上について考察する。C-S-Hの炭酸化に影響を与える様々な因子のうち、細孔内の水分が炭酸カルシウムの生成反応の媒体としての役割を果たす一方でCO2拡散を妨害することと乾湿繰り返しがC-S-Hの細孔構造の変化をもたらすことに着目し、乾湿繰り返し条件下におけるCO2拡散とイオン溶解度の変化及びC-S-Hの細孔構造・Ca/Si比・比表面積の変化がC-S-Hの炭酸化挙動に及ぼす影響について検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は、水酸化カルシウムと二酸化ケイ素を用いて、Ca/Si比(0.7,1.2,1.5)の異なるC-S-Hを合成し、異なる相対湿度(40% RH、70% RH、100% RH、60-80% RH、50-90% RH)環境下に一定期間存置して炭酸化させ、その炭酸化度を測定した。 各相対湿度環境下で炭酸化した合成C-S-HのCaCO3生成量を評価するため、熱重量分析を行った。その結果、C/Sが1.5の場合、70、60-80、50-90% RH の環境下で炭酸化したC-S-Hでは、700℃付近にピークが見れたが、C/Sが1.2の場合、同条件でのピークが見られなかった。C/Sが1.5の場合、合成直後にCa(OH)2が8.7%程度残っていたため、 Ca(OH)2の炭酸化によりCalciteの生成量が増えたと考えられる。本実験では、70、50-90% RHの環境下でのCaCO3生成量がほぼ同じであった。通常、乾燥によるC-S-Hシートの再配列から粗大な空隙が生じ、その連続性が高まる。その後、その後湿度が高くなるとより多くのイオンがC-S-Hシートから溶脱されてより炭酸化が進む。しかしながら、本実験で用いた合成C-S-Hは、その粒径が小さかったため、すでに比表面積が大きく、乾湿繰り返しによるCO2促進固定効果が見られなかった。 試料の各鉱物の同定は、粉末X線回折により行った。C/Sが1.5の場合、40% RHを除いてCalciteの生成量が多く、C/Sが1.2のC-S-Hにおいては、vateriteの生成量が多かった。また、C/Sにかかわらず、50-90、70、60-80、40、100% RH順にCaCO3生成量が多い結果が得られた。以上の結果は、熱重量分析結果とおおむね一致する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の計画通りにCa/Si比が1.5、1.2、0.7の合成C-S-Hを研究対象とし、乾湿繰り返し環境下における合成C-S-Hの炭酸化程度を熱重量分析、X線回折測定によるCO2固定量、フーリエ変換赤外分光分析による化学結合状態変化結果から評価を行った。温度とCO2濃度は、それぞれ20℃と0.04-0.05%で、炭酸化期間は1、3、7、14日とした。 さらに、実験結果から合成C-S-Hの粒径が小さい場合、すでに比表面積が大きく、乾湿繰り返しによるCO2促進固定効果が見られないことが分かったため、C3Sの水和から直径が数ミリのC-S-Hの製作を試みている。
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今後の研究の推進方策 |
粉末状態のC-S-Hを対象として乾湿繰り返し環境下における炭酸化程度の評価を行った結果、粉末状態のC-S-Hは、比表面積が大きいため、乾湿繰り返しによるC-S-H内部の炭酸化効果より表面から溶出されるCaイオンによる炭酸化の方が大きい影響を与えていたことが明らかになった。したがって、今後、C3SおよびSiO2ゲルを用いてペースト状のC-S-Hを作成し、より大きいサイズ(約1mm)のC-S-Hを対象とし、乾湿繰り返しにおける内部構造変化が炭酸化に与える影響を明らかにする予定である。
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