研究課題/領域番号 |
23K19186
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0401:材料工学、化学工学およびその関連分野
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
花田 隆文 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 助教 (90982710)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 深共晶溶媒 / レアメタル / 溶媒抽出 / 分子間相互作用 / 水素結合 |
研究開始時の研究の概要 |
溶媒抽出法は、レアメタルを迅速に分離精製する技術として古くから実操業されている。しかしながら、近年ではSDGsの観点から環境に有害な有機溶媒の使用量削減が強く求められている。そこで、有機溶媒を代替可能な環境調和型溶媒として深共晶溶媒(DES)が着目されている。DESは水素結合ドナー化合物と水素結合アクセプター化合物を混ぜるだけで容易かつ安価に調製可能であり、有機溶媒と比較して低揮発性であることから実用化可能な環境調和型溶媒として注目されている。特に本研究では、報告例の少ない“疎水性”のDESを開拓することで、疎水性相互作用と水素結合が織りなす新たな分離場を創出する。
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研究実績の概要 |
本研究は、疎水性深共晶溶媒のもつ固有の分子間相互作用が、レアメタルの抽出分離挙動に及ぼす影響を系統的に明らかとすることを目的とする。本年度は、ドデカノールまたはドデカン酸を水素結合ドナー(HBD)とし、トリオクチルホスフィンオキシドを水素結合アクセプター(HBA)とする疎水性深共晶溶媒(DES)を調製し、レアメタルの抽出挙動に及ぼす水素結合部位(アルコール or カルボン酸)の影響について検討した。はじめに、HBDまたはHBAをそれぞれ単一で有機溶媒に溶解し、金属の抽出挙動を評価した。HBD化合物単体ではいずれもほとんど金属を抽出しない一方、HBAは金(III)、白金(IV)およびパラジウム(II)をいずれも効率的に抽出可能であり、抽出序列は金>白金>パラジウムとなった。一方、2種類のHBDを用いたDESについて各金属の抽出挙動を検討したところ、ドデカノールを含むDESではTOPO単一系と似た抽出序列を示し、いずれの金属も抽出効率が大幅に改善した。一方で、ドデカン酸を含むDESでは低塩酸濃度条件における各金属の抽出効率が大幅に低下したが、高塩酸濃度条件において白金(IV)とパラジウム(II)の分離効率が大幅に向上することを見出した。核磁気共鳴分光法と赤外分光法に基づきHBD―HBA間の分子間相互作用を評価したところ、ドデカノールと比較してドデカン酸を含むDESではHBDとHBA間により強い水素結合が生じていることが示唆された。疎水性DESのHBD―HBA間の水素結合の強弱に応じてレアメタルの抽出分離挙動が変化することを系統的に明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、疎水性深共晶溶媒のなかで生じている主な分子間相互作用のうち、水素結合の強弱のみが異なる疎水性深共晶溶媒を創製し、レアメタルの抽出分離挙動に及ぼす影響を系統的に示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、水素結合の相互作用は貴金属の抽出分離挙動に大きな影響を持つことが明らかとなった。続いて、疎水性深共晶溶媒(DES)における疎水部の分子構造が貴金属の抽出分離に及ぼす影響を明らかにしたい。具体的には、水素結合ドナーもしくはアクセプター分子の疎水部のみを飽和アルキル鎖もしくは芳香族置換基等に変化させたDESを新たに調製し、疎水性部の分子構造が貴金属の抽出分離挙動に及ぼす影響を系統的に検討する。
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