研究課題/領域番号 |
23K19213
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
徳永 恵津子 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 研究員 (70569889)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | 人口ペプチド / 細胞膜透過ペプチド / がん細胞膜透過ペプチド / フタロシアニン / 光線力学的療法 / ソルバトクロミズム |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、がん細胞のみを狙い撃ちし、他の細胞を傷つけない治療法の開発を目指している。フタロシアニン(Pc)は微妙な酸性度の違いから色調を変化させることがわかっている。Pcが正常細胞とがん細胞に取り込まれたとき、異なった色調を呈すると考えられる。がん細胞に取り込まれたPc特有の吸収波長の光照射を行った時、正常細胞は反応せず、がん細胞のみ破壊される。これまでの光線力学的治療の細胞殺効果は確認されているが、安全な光線力学的療法に必須である「細胞にPcを取り込ませる」プロセスの開発がなされていない。本研究は、細胞にPcを取り込ませるシステムを構築し、副作用のない光線力学的療法の開発を目指す。
|
研究実績の概要 |
これまで、微妙な酸性度の違いによって色調が変化するフタロシアニン(Pc)の研究を行ってきた。がん細胞は、その種類によって微妙に酸性度に違いがある。Pcが細胞内に取り込まれた際、このがん細胞の微妙な酸性度の違いから、Pcは可視光領域の色調変化を示すと考えられる。しかし、Pcが細胞内に取り込まれたことを確認できていない。そこで、本研究では初めに、Pcを細胞内に取り込ませるための実験に着手した。既存の研究から、緑膿菌のヘム獲得タンパク質HasAは有機溶媒中でPcを内包させて、Pcを水溶液中で扱う事が可能であると考えられる。しかし、細胞透過性ペプチド(CPP)に対してHasAが大きすぎるという問題があるためヘム結合人工タンパク質に着目した。ヘム結合人工タンパク質であるheme fusion tag(hm14)と細胞透過性ペプチド(CPP33)の融合ペプチドの大腸菌内発現を試みたが、IPTG誘導により増殖が停止し、過剰発現が確認されなかった。この結果を考慮し、合成ペプチドを用いて実験を進めることとした。本研究を遂行するためには、細胞株の培養を構築することは必須であるため、細胞透過性ペプチドCPP44を用いた既存の実験で実績のある白血病細胞株K562の培養系を構築した。細胞内にPcを取り込んだ後の実験ではあるが、Pcを取り込んだ細胞の色調を観察し、その色調から吸収波長を調べ照射する光を決定する必要があるため、カラーカメラを搭載した顕微鏡を使用し観察可能な実験環境を整えた。さらに、Pcを取り込んだがん細胞のみが吸収する吸収波長を照射し、がん細胞のみを死滅さるために、照射する光の波長を限定的にする必要がある。この実験を遂行するために、安全な光源を調べ、波長を限定的にするためにカラーフィルターを用いて実験を行う環境を整えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フタロシアニン(Pc)を細胞内に取り込ませるための実験を行っており、Pcが細胞内に取り込まれた後の実験を円滑に進めるための実験方法、環境も整っているため。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画に従いフタロシアニン(Pc)を細胞内に輸送するために、フタロシアニン結合人工ペプチドを開発する。開発したペプチドのN末端に、肝臓がん細胞と白血病細胞に特異的に侵入する細胞透過性ペプチドを融合すると、フタロシアニン結合人工ペプチドをがん細胞に輸送することが可能となる。このペプチドが細胞内に輸送されると、Pcががん細胞内の酸性度に応じて異なる色調を示す。この色調から得られた情報である吸収波長を可視光からカラーフィルターを用いて細胞内Pcに照射し、細胞傷害性のある一重項酸素を生成させ、がん細胞が死滅することを確認する。同時に、照射した光だけでは細胞が傷害を受けないことを確認し、本研究の目的の一つである安全な光線力学的治療法の開発を目指す。
|