研究課題/領域番号 |
23K19214
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 倫実 京都大学, 工学研究科, 特定研究員 (80970003)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 生体模倣デバイス / 肝細胞 / 血管新生 / マイクロ流体デバイス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,肝類洞内皮細胞で構成される灌流可能な血管網を肝細胞の周囲に3次元的に実装した生体模倣システムを開発する.マイクロ流体デバイス内において,肝細胞,肝類洞内皮細胞および線維芽細胞を用いて作成した肝スフェロイドの内部からの血管新生を図ることで,従来困難であった肝スフェロイド中心部における3次元的な血管新生と経血管的な薬剤輸送を可能にする.薬物投与時の代謝効率や肝毒性,および肝細胞の機能評価をシステム設計にフィードバックし,生体内における肝代謝の生体外での高精度な再現を目指すとともに,次世代における新薬開発や臨床研究の発展への貢献を図る.
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研究実績の概要 |
マイクロ流体デバイス内において,肝類洞内皮細胞(LSEC)で構成される灌流可能な血管網を肝細胞周囲に3次元的に実装することに成功した.肝細胞に線維芽細胞と肝類洞内皮細胞を添加して自律的に形成したスフェロイドをデバイスに導入した場合,スフェロイド方向の血管新生と周囲での血管網の形成がみられた.このとき,血管がスフェロイド内部で管腔を形成できず,血管網の灌流性が損なわれることが明らかになった.しかし,この課題は,スフェロイドに0.1 mg/mLのcollagen type 1を含ませ,3%メチルセルロース内で急速にスフェロイドを形成することで解決され,スフェロイド周囲の血管網の灌流に成功した. 血管網の形成が確認されたデバイスにおいて,スフェロイドをデバイスから摘出して凍結切片を作成し,免疫染色をおこなった.その結果,スフェロイド内部に肝類洞内皮細胞のマーカーであるCD31が帯状に観察されたことから,スフェロイド内部においても血管が形成されていることが示唆された. また,デバイス培養したスフェロイドの肝機能評価として,アルブミンの免疫染色評価と尿素合成量の定量評価をおこなった.本研究において,肝細胞はヒト肝がん由来細胞株のHepaRG細胞を用いている.スフェロイドに含まれるHepaRG細胞においてアルブミンの発現が確認された.また,デバイス培養におけるHepaRG細胞の1細胞あたりの尿素合成量は,培養7日目以降において2次元培養されたヒト初代培養肝細胞の約2.6倍であり,培養11日目まで維持されることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝スフェロイドへの線維芽細胞の導入によって,スフェロイド方向への血管新生と周囲における血管網の形成に成功した.また,スフェロイド内部や周囲の血管網に灌流性を持たせるためのスフェロイド作成条件を見出し,最適化した.以上から,生体外で経血管的に培養液や薬剤をスフェロイド周囲および内部に輸送可能なプラットフォームの原型を確立することができた.さらに,開発されたデバイスで培養された肝細胞におけるアルブミンの発現と,2次元培養された肝細胞よりも多くの尿素合成量を確認できたことから,薬剤評価可能な水準で肝機能が維持されていることが示唆された.以上より,次年度は計画通り,本デバイスを用いた薬剤評価に移ることができるため,おおむね順調に進展していると考える.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,胆管の発現など,デバイス培養スフェロイドに関する追加の機能評価をおこなう.また,本デバイス内で血管網を構成する肝類洞内皮細胞には,リンパ管マーカーを発現する,細胞質に小孔が存在し高い物質透過性をもつ,などの特異性があるが,それらの特異性がデバイス内でどの程度保持されているかの評価に挑戦する. さらに,リファンピシンなどのチトクロームP450誘導剤を薬剤候補として選定し,開発したデバイス内における薬物代謝評価を実施する.
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