研究課題/領域番号 |
23K19225
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東都大学 |
研究代表者 |
山下 知子 東都大学, 幕張ヒューマンケア学部, 助教 (40803721)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 外反母趾 / 扁平足 / 子どもの発達支援 / 大規模コホート / 中足部回内 / 足部骨格解析 / 足部変形 / 足部骨格構造解析 / 子ども / バイオメカニクス |
研究開始時の研究の概要 |
足部骨格の形成は小学校期に行われるため経時的な評価が求められるが,計測手法が存在せず,評価指標は明らかではない.本研究では,解剖・運動学的見地からスマートフォンを用いた足部骨格3D計測システムを開発し,足部の発達の新しい評価指標の構築を目的とする.縦断的研究として6年間の大規模コホートから小学生1,300名の足部骨格の特徴量を解析し,足部骨格タイプ別の足部の発達状況や変形の要因となる特徴量との関係を明らかにする.
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研究実績の概要 |
小学生の外反母趾や扁平足などの足部変形が課題である.発達工学の観点から,踵骨や内側縦アーチ(土踏まず)の骨格形成の基礎は6~12歳に完成するため,小学校期の骨格形成が将来に大きく影響する.すなわち,発達過程でのアプローチは子どもの足部変形リスクを予防できる可能性がある.そのため,この時期に足部骨格を定量的に計測・評価し,個人の発達過程に合わせた支援が必要となるが,計測手法および評価指標が存在しない. 子どもの足部骨格の計測手法に内側縦アーチを構成する舟状骨の高さをX線やノギスで測る手法があるが,侵襲性や計測誤差が課題である.そのため,簡便で正確な計測手法の開発と横断・縦断的観点から評価指標を明らかにすることが求められる. そこで本研究の目的は,解剖・運動学的見地から足部の発達の評価指標を構築するために,①開発を進めてきた足部骨格3D計測システムによるAI技術を用いた発達評価指標の構築,②大規模コホートによる足部骨格タイプ別の足部の発達や変形,特徴量の関係を横断・縦断的観点から明らかにする.そして,足部骨格の発達状況を個別にフィードバックし,データに基づく効果的な発達支援の実現を目指す. 本研究ではここまでに,スマートフォンを用いた足部骨格3D計測システムの基礎を開発し,内側縦アーチの指標となる舟状骨の3次元的指標(アーチ高,回内角度),拇指角度,踵骨角度など10以上の指標を構築してきた.そして小学生の横断・縦断的大規模コホートの5年目が終了した.小学生1,300人を対象に足部骨格計測,足圧分布による床面への接地状況,下肢筋力等を計測している.すなわち,筋機能,バランス機能の発達の観点から,足部の発達が解析できるよう詳細に検討し進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①足部骨格3D計測システムによるAI技術を用いた発達評価指標の構築:開発システムの精度は実測データと比較し,距離1.7mm,角度0.1度であることを確認した.特徴量は,A.足拇趾先端,B.足第2趾先端,C.足甲の1番高い点,D.踵骨隆起部,E.舟状骨,F.第1中足骨頭,G.第5中足骨頭等である.足部の発達を評価する指標には,a.足部高(C.足の甲の1番高い点から床面までの距離),b.前足部幅(F.第1中足骨頭からG.第5中足骨頭までの距離:足指の付け根部の幅),c.踵幅,d.舟状骨高(E.舟状骨から床面までの距離),e.舟状骨回内角度(B.第2趾先端-E.舟状骨-D.踵骨隆起部の角度),f.骨格の内側への傾き(中心線(B-D)とC.足甲の1番高い点までの距離),g.拇指角を設定し,小学生1,300人の計測データから分布,特性を評価した.その結果,a.足部高やb.前足部幅,c.踵幅は増大していたが,d.舟状骨高は低下し,e.舟状骨回内角度は増大し,足部の扁平化が進行している児童が存在していることがわかり,本指標は足部の発達評価指標として有力であることが示唆された. ②大規模コホートによる足部骨格の特性解析と発達の関係:2023年度は小学生1,383人(縦断データ703人含む)のフィールド実験を行った.足部の発達の観点から,足部骨格,下肢筋力,足圧分布データを取得し,4年次から6年次の2年間の足部の発達状況に着目し解析を行った.その結果,4年次にe.舟状骨回内角度(舟状骨が出っ張っている)が大きいほど,6年次のe.舟状骨回内角度,g.拇指角は増大傾向にあった.この点は大変興味深く,筋力,足裏への荷重状況等との関連も調査している.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は特に下記の点について研究を進める. ・評価指標構築には,骨格部位の発達による移動方向・量の3次元評価に加えて足底部の評価が求められるが,足部骨格と足底部の関係は十分に明らかではない.ここまでの計測データから,足指接地状況は前足部(足指の付け根部)の幅や厚み,足部の扁平化や外反母趾などの足部骨格の状態は荷重位置と関係があることがわかってきた.そこで,足底部の荷重位置を自動で捉えるための解析システムを開発し,足部の発達,変形に関係する足部の特性を明らかにする. ・本研究の実施期間にはCOVID-19流行期間も含まれている.ここまでの計測データから,COVID-19流行前から現在までの足指力(膝下の筋力)が基準値以下に該当する児童の割合は2019年度(流行前):0%,2020年度(流行1年目):0.7%,2021年度(2年目):27.6%,2022年度(3年目):24.7%,2023年度(4年目):17.5%と変化していた.流行1~2年目の活動自粛に伴い,基準値以下に該当する児童の割合は増加し,活動が再開し始めた2022年度からは低下傾向にあることがわかった.発達過程において,骨の発達は4~15歳,筋の発達は6~15歳のように発達は決められた期間にしか得られない.COVID-19流行により,遊びや体育が阻害されたため,筋肉量が少ない,骨量が少なく骨折しやすい,運動機能が十分に高まらないなど身体的発達への影響をおよぼす可能性は高い.そこで,下肢筋力に加え,内側縦アーチを含む足部アーチの発達状況の調査を行う.また,骨格形成が大きく進む3~4年次に活動自粛をしていた児童,していなかった児童の足部の発達状況の比較を行う.この結果から,運動の有無による足部の発達への影響が明らかになると,データに基づく運動・足部ケア等を活用した効果的な発達支援が実現できる.
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