研究課題/領域番号 |
23K19226
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0403:人間医工学およびその関連分野
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
藤村 宗一郎 東京理科大学, 工学部機械工学科, 助教 (70904267)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 脳動脈瘤 / 脳血管内治療 / WEB / 数値流体力学解析 / 機械学習 / 3Dプリンター / 数値流体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
本邦において2020年より脳動脈瘤治療に用いられるWEB (Woven Endo Bridge)は,瘤内に留置する球体状の金属メッシュだが,留置失敗率が高い(30%以上)ことが課題である.留置失敗の原因は,個別の脳動脈瘤のサイズや形状に応じて適切なサイズのWEBを選定できていないことに加え,WEB留置後の詳細な血行動態を把握できていないことが一因としてある.本研究では個別の脳動脈瘤に応じた最適なサイズのWEBを予測可能にするとともに,WEB留置後の脳動脈瘤に対するCFD解析技術を構築することで,WEB留置後の血行動態を把握可能にするための技術開発を行う.
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研究実績の概要 |
本研究では,「個別の脳動脈瘤に応じた最適なサイズのWEB (Woven Endo Bridge)を予測可能な機械学習モデルを構築すること(目的I)」及び,「WEB留置後の脳動脈瘤内の血行動態を取得可能にするための数値流体力学(CFD: Computational Fluid Dynamics)解析技術を構築すること(目的II)」を目的としている.それぞれの目的に対する本年度の研究実績は以下の通りである. 目的I:東京慈恵会医科大学において過去に脳血管内治療を施行した脳動脈瘤のうち,WEBによる治療の対象となり得る,分岐部に発生した脳動脈瘤についてデータベースに対する調査を行った.結果として計663症例分の対象が選定された.この内,計80症例分について術前血管造影画像より作成した3次元形状データを元に内腔のある脳動脈瘤3Dプリントモデルを造形した.更に,この内計20症例分について3Dプリンターモデルに対するWEB留置の実験を行い,各症例に対して最適なWEBのサイズに関するデータを取得した. 目的II:東京慈恵会医科大学においてWEB留置により治療を行った脳動脈瘤に対する術前及び術後の脳血管造影画像を元にWEB留置前の脳動脈瘤,及びWEBの留置後の三次元形状を再構成した.再構成したWEBの形状を元に,ワイヤー直径分の厚みを持たせたポーラスモデルを配置する手法によって留置後のWEBを再現し,CFD解析を可能にした.このとき,ポーラスモデルに与える各種係数は,WEBに対する光学顕微鏡を用いた撮影を元に構成したメッシュ形状に対して,血液と同等の流体が通過する際に生じる圧力損失の値を求めることで決定した.計5症例に対してCFD解析を行い,それぞれの症例においてWEB留置後の脳動脈瘤における流速,圧力等の血行力学的因子を導出可能にした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的Iに関する研究について,当初計画では初年度終了時までに,計100症例分の脳動脈瘤について選定することを目標としていた.また,ここで選定された100症例分についての内腔のある脳動脈瘤3Dプリントモデルは2年目第1四半期までに造形完了することを目標としていた.本年度は症例選定について目標を大きく超える計663症例を対象として抽出することが可能であった.また,3Dプリントモデルの造形はすでに80症例分の造形を完了しており,予定通りであると言える.造形した3Dプリントモデルに対するWEB留置は,初期段階における試行錯誤が発生したため進捗がやや遅れ気味であるが,現在は留置施行時における手順が確立された状態であるためスムーズな実施が可能であり,予定通り2年目第1四半期までに100症例分の留置を完了できる見込みである. また,目的IIに関する研究について,当初予定では2年目第2四半期までにWEB留置後の脳動脈瘤におけるCFD解析のための技術開発を完了する予定であった.本年度は進捗が良好であり,すでにWEBを留置した脳動脈瘤に対するCFD解析を実施可能にするための技術を確立済みである.特に,脳血管造影画像を元に再構成したWEBは,メタルアーティファクトの影響により不鮮明な形状となることが想定されていたが,画像撮影時の機器設定の工夫と画像処理によりWEBの全体形状を比較的良好に捉えることが可能であったことが進捗良好の要因として大きい.更に複数の症例に対する解析も完了しており,血行力学的因子の導出が可能であることが示されている. 以上より本研究は現在までに概ね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
現在までに内腔のある脳動脈瘤3Dプリントモデルの造形は80症例分,3DプリントモデルへのWEB留置は20症例分まで完了しているが,これらモデルの造形とモデルに対するWEB留置を当初予定の100症例まで引き続き継続して行う予定である.100症例分のデータが得られた後,目的Iの最終目標であるWEBサイズ予測器の開発へと移行する予定である.ここでは,脳動脈瘤の部位や三次元的形状より,症例に応じた最適なWEBを予測可能な機械学習モデルを構築する.予測されたWEBのサイズと最適なWEBのサイズの差がカタログ上における1サイズ以下である場合を正解とした場合に,正解率が70%以上となることを開発の目標とする. また,本年度までに構築したWEB留置後の脳動脈瘤に対するCFD解析の技術より,実際にWEBにより治療した脳動脈瘤症例における流速,圧力等の血行動態因子の値をCFD解析の結果に基づいて抽出する.抽出した値を,先導研究において導出したコイル塞栓術実施の場合における術後の閉塞を予測する式に代入し,試験的に閉塞の予測を行う.ただし,コイル塞栓術のために構築された閉塞を予測する式がWEBの場合にも適用可能かについては詳細な検討が必要である.これにより,CFD解析結果をWEB留置の場合における治療計画として活用できるかの可能性を検討する. 加えて,これまでに得られたデータを元に学術会議で成果報告を行うことを目指す.
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