研究課題/領域番号 |
23K19247
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
佐々木 陽一 九州大学, 工学研究院, 助教 (30967245)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 励起状態ダイナミクス / 励起子ポラリトン / 電子移動 / 光-物質強結合 |
研究開始時の研究の概要 |
光を閉じ込める共振器内で光と励起子を強く相互作用させ、励起子に光子の衣をまとわせることで、材料のポテンシャル曲面を変化させることができる。この物性変調を光誘起電子移動過程に適用し、光をまとった物質群を開拓することで、光触媒・光発電を高効率化する新しい材料の創出が期待できる。本研究では、電子ドナーと電子アクセプターの分子構造を設計し光共振器の作製を行い、光-物質強結合下で電子移動速度が変化するかどうかを調べる。
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研究実績の概要 |
光を閉じ込める共振器内で光と励起子を強く相互作用 (強結合) させ、励起子に光子の衣をまとわせることで、材料のポテンシャル曲面の変調が可能となる。この変調を光誘起電子移動過程に応用すれば、共振器に基づく電子移動速度の精密制御が期待できる。しかしながら、共振器内に高濃度に導入する必要がある電子ドナー・電子アクセプターの色素間相互作用の制御ができておらず、強結合下における物性変調の詳細は明らかとなっていない。そこで本研究では、適切な側鎖を持つ色素の設計を行い、高速分光に基づいて励起状態ダイナミクスの詳細を評価する。 本年度は化合物の合成とおよび共振器の作製を行った。ポリマー中に電子ドナーを高濃度に分散させ、銀の蒸着膜をミラーとして共振器を作製し、角度依存反射スペクトルより光-物質相互作用の指標であるラビ分裂の評価を行った。その結果、側鎖の設計に基づき、強結合条件を満たしつつ色素間の相互作用が抑制された共振器の作製に成功した。得られたスペクトルの角度依存性は転送行列法に基づくシミュレーション結果とおおむね一致しており、共振器の設計の妥当性を確認できた。また、今回用いた共振器の構造では、反射の影響が強く高速分光での過渡種の追跡が難しいことも明らかとなった。今後は、プラズモニクス材料や分布反射型ミラーを用いた共振器など、高速分光に適した材料を用いて電子移動ダイナミクスの評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、参照化合物のポルフィリン誘導体の合成と、これを用いた共振器の作製および発光ダイナミクスの評価を進めた。最終的に、置換基の設計によって色素間の相互作用を抑制しつつ共振器内での色素濃度を大幅に向上させることに成功した。また、角度依存反射スペクトルでは大きなラビ分裂が確認され、強結合条件を満たしていることが確認できた。実験系の立ち上げに時間を要したものの、合成・評価の面で十分な進捗が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、電子ドナー・アクセプターの合成の収率が低く、共振器の作製と評価が進んでいない。そこで来年度も引き続き反応条件を検討し追合成を行う。また、強結合条件を満たす共振器を作製し、高速分光を行う。なお、共振器の作製においては、英国シェフィールド大学のClark研究室にて高速分光に適した共振器の作製を行い、励起状態での電子移動ダイナミクスの評価を行う予定である。
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