研究課題/領域番号 |
23K19252
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
栗澤 尚瑛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 助教 (20980618)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | イエゾシド / カルシウムポンプ / 構造活性相関 / 海洋天然物 / ケミカルバイオロジー |
研究開始時の研究の概要 |
応募者はこれまでに、海洋シアノバクテリアからがん細胞に強力な増殖阻害活性を示す新規化合物イエゾシドを発見し、その全合成の達成、およびカルシウムポンプを標的分子とすることを明らかにしている。一方、合成した類縁体との構造活性相関の結果から、本化合物はカルシウムポンプに加えて別の作用標的を有することが示唆された。本研究では、確立した合成ルートを基盤として作製する種々のプローブやオミクス解析を利用し、イエゾシドの新たな作用機序の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
今年度はまず、イエゾシドの構造活性相関について検討を行った。種々の類縁体を合成し、がん細胞に対する増殖阻害活性およびカルシウムポンプ(SERCA)阻害活性を比較した結果、トリペプチド部分は両方の活性に必須であることが明らかになった。その一方で、脂肪酸部分の二箇所の絶対立体配置や糖の有無は、増殖阻害活性に大きな差を与えるものの、SERCA阻害活性に与える影響は比較的小さく、二つの活性がパラレルに相関しないことを明らかにした。 続いて、イエゾシドがSERCA以外に相互作用する生体分子を同定するため、後からクリック反応により種々のプローブに変換可能な末端アルキン型イエゾシドの合成に着手した。先の構造活性相関の結果から、糖部分の水酸基を修飾することで種々の生物活性を維持したプローブが合成できると判断し、まずは合成したイエゾシドに直接末端アルキンを含むリンカーを導入することを試みた。しかし、種々の反応条件を検討したが、水酸基周辺の環境がかさ高いためか反応が進行しなかった。そこで、末端アルキンを導入した糖を先に合成し、それをグリコシル化、続くペプチドの縮合を行うことで目的の末端アルキン型イエゾシドを合成した。さらに、SERCA阻害活性をもつが増殖阻害活性が大幅に減弱する非天然型のジアステレオマーに関しても、同様の手法で末端アルキンを導入した。これら2つのSERCA阻害活性を測定したところ、2-3倍程度の低下に留まっており、SERCAへの親和性を十分に維持していた。 今後、合成した2つのプローブを利用し、イエゾシドが関与する他の生体分子について明らかにしていく。また、これと並行して天然型および非天然型のイエゾシドについてshRNAスクリーニングを共同研究で実施しており、感受性の違いを規定する因子について探索している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、イエゾシドの詳細な構造活性相関を明らかにし、それを基に各種プローブの足掛かりとなる末端アルキン型イエゾシドを合成した。本化合物の合成は上述した理由から想定よりもやや時間を要したものの、目的通り生物活性を維持したものを合成することができた。また、末端アルキン型の非天然型イエゾシドも合成したことで、これをネガティブコントロールとして用い、種々の解析でクリアな結果を今後得ることができる。
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今後の研究の推進方策 |
合成した末端アルキン型イエゾシドを利用し、アフィニティークロマトグラフィーにより直接相互作用する生体分子を同定する。当初の想定通りに新たな標的分子が発見された際は、ノックダウンによる感受性の変化や、関連タンパク質・シグナル伝達にイエゾシドが与える影響をウエスタンブロッティングやPCRなどにより明らかにする。
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