研究課題/領域番号 |
23K19256
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
三宅 裕也 法政大学, 生命科学部, 助手 (20978746)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | ナノグラフェン / 窒化ホウ素 / 集合構造制御 / 磁性 / 分子間力 |
研究開始時の研究の概要 |
量子コンピューティングの基礎技術であるスピントロニクス分野で、磁性ナノグラフェンが注目されている。磁気物性には集合状態が影響するため、これを制御可能な設計が求められるが、磁性ナノグラフェンの安定性や合成上の課題から未開拓である。 本研究では、調製容易かつ安定な窒化ホウ素含有保護基を酸化することで磁性ナノグラフェンの性質が発現することに着目し、この保護基を対称的に接続した窒化ホウ素 (BN) 含有ナノグラフェンの開発を行う。共存させる物質との水素結合の形成、或いは強く分極したπ電子平面を有する六方晶窒化ホウ素 (h-BN)上への積層により、集合構造の制御を可能とし、酸化した際の磁性を制御する。
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研究実績の概要 |
本年度は、磁性ナノグラフェンの最小単位であるphenalenyl (PLY)と同一骨格を持つboron diamino naphthalene (Bdan) を用いて、三回回転対称に結合した窒化ホウ素含有ナノグラフェン (BNNG) を開発し、ゲスト分子導入による分子内構造及び積層構造の制御、PLYと等電子的に酸化した際の各結晶における磁気的応答を研究した。 目的の対称性のBNNGの合成には従来、塩化鉄触媒を必要としていたが、非磁性の塩化亜鉛に置き換えた上で還流する反応条件下でより良い転換率を確保できた。結晶構造の制御においては、再結晶溶媒を変更することで、ゲストとして溶媒分子を取り込み、3種類の擬多形を得ることに成功した。X線単結晶構造解析より、ゲストのない状態ではbiphenyl類に見られるようなねじれた配座を取る一方で、ゲストの導入により平面化することが分かった。更に、積層構造は三者三様であり、分子内の構造や静電ポテンシャルのみならず、ゲスト分子により生じた分子間力が影響していることが示唆された。 また、いずれの結晶もヨウ素蒸気に曝露することで、容易に酸化され、PLYと等電子的なカチオンラジカルとなることを電子スピン共鳴分光法により明らかにした。興味深いことに分子内の構造ではなく、積層構造の違いに依存して、スピン濃度の上昇に対するg値や線幅の増減が異なることが判明し、特に、ゲストを包接した結晶の中でも、アセトニトリルを含む結晶でのみ、高いg値を示し、かつ交換相互作用の寄与の上昇を示すExchange Narrowingが引き起こされることが分かった。 これらの結果をもとに、グラフェンや六方晶窒化ホウ素などの基板効果がBNNGの配列に与える影響を検証中であり、XPSによる蒸着膜厚さの推定や顕微蛍光分光法を用いた励起キャリアからの発光の消光などを調査している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画に加えて、Bdanへの窒化ホウ素付加・環拡張反応にも成功しており、これが同じトポロジーを有する窒素置換PLYラジカル前駆体にも適用可能なことが分かってきている。この反応の開発により、基板上に配列するBNNGのBN含有率や平面性を制御できるようになったほか、酸化還元処理なしに磁性を有する環拡張型BNNGの開発と基板効果の検討が可能となったため、当初の計画に比べて、分子間力の制御や配列するナノグラフェンの磁気的相互作用の研究がより進展しやすくなった。当初計画の内容についても順調で、結晶構造制御による酸化時の磁性への影響について学会発表を行い、現在論文作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
検証中の2次元基板上におけるBNNGの配列のほか、van Hove 特異点の存在により離散的で発散したスペクトルを生じやすい1次元配列を指向し、1次元のナノチューブ内への配列や重合により、より観測しやすい系での実験を進める。また、ラジカル発生に酸化還元を不要とする環拡張型BNNGの開発を進め、構造・配列と磁性の相関をより明解にできる実験系を構築する。
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