研究課題/領域番号 |
23K19258
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0501:物理化学、機能物性化学、有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
橋本 理一 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 特別研究員 (00980921)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 生体内合成 / 有機分子触媒 / 天然物 / 天然物合成 / 人工酵素 / がん治療 |
研究開始時の研究の概要 |
所属研究室で取り組んでいる「生体内合成化学治療」は生体内の特定の場所で薬剤を合成することにより、副作用を軽減した新しい治療法である。しかし現在は生体内で合成できる化合物は限られ、毒性を示す可能性がある金属触媒を用いている。本研究は生体内で抗がん作用を示す天然物を有機分子触媒により合成する。これにより従来の治療法が適用しにくいトリプルネガティブ乳がんを治療することを目的とする。天然物は薬剤に比べ複雑な構造を有していることから、生体内で合成可能な薬剤の種類が拡大すると期待される。また金属触媒を用いない治療法は、さらに副作用を軽減した治療法の開発に繋がる。
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研究実績の概要 |
トリプルネガティブ乳がん (TNBC) は抗体医薬品が適用できず、その治療は副作用の大きい化学療法に限定される。一方、ヒト血清アルブミンに糖鎖クラスターを導入した金属輸送体は、がん細胞上のレクチンを認識することからTNBCの治療に有効だと期待された。しかし従来の手法では潜在的毒性や安定性が懸念される金属触媒を使用する必要があり、合成できる化合物も平面性が高いものに限定されていた。本研究ではアルブミンを活用した有機分子触媒の選択的な輸送により、副作用の小さい新たなTNBCの治療法を開発することとした。有機分子触媒は金属触媒に加え毒性が低く、安定性が高いと期待される。さらに新たな反応を開発することにより生体内で合成可能な基質の種類を増やし、TNBCに対して抗がん活性を示す天然物の合成に適用する計画である。 本年度はTNBCに抗がん活性を示す化合物が合成できるような有機分子触媒を探索した。種々検討した結果、当初計画していたブレンステッド酸による環化は進行しないことを明らかにした。代わりに有機Lewis酸であるトリアリールボランを触媒として用いると、連続的なカチオン環化が進行し抗がん活性を示す天然物の類縁体を合成できることを見出した。本触媒も当初の計画通り、金属触媒で課題であった毒性や安定性を改善できる。さらに本反応は水を添加しても進行し、生体内で実施できると期待できる結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画とは異なるものの、有機分子触媒により水存在下においても抗がん活性を示す天然物の誘導体を合成することができた。これは生体内で使用可能な有機分子触媒の開発に繋がる結果であり、計画通りの進展だと考える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度で見出した触媒を生体内で使用するために、アルブミンの疎水性ポケットを導入する予定である。アルブミンと結合するクマリンに有機分子触媒を連結し、生体内で抗がん活性を示す天然物誘導体を合成する。
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