研究課題/領域番号 |
23K19265
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0502:無機・錯体化学、分析化学、無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
松村 圭祐 東京農工大学, 学内共同利用施設等, 特任助教 (60962206)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ポストリチウムイオン電池 / マグネシウムイオン電池 / 多価イオン電池 / 結晶構造 / 負極材料 / バナジウム / 酸化物 |
研究開始時の研究の概要 |
資源偏在リスクを背景にポストLi+電池に注目が集まっている。本研究では、結晶内に「三次元フレームワーク構造」を持つ酸化物系の負極材料を用いることで、既存の炭素系/金属系負極を超える長期サイクル/高速充放電特性の実現を目指す。多電子反応による高容量化が期待できるバナジウム系負極の内、超イオン伝導構造を有するバナジン酸リチウムをモデル材料に選択し、ナノサイズ化・複数元素置換によるハイエントロピー組成の最適化からNa+およびMg2+の挿入抜出特性向上の方法論を確立する。
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研究実績の概要 |
資源偏在リスクを背景にポストLi+電池が注目される中、正極材料、電解質の検討は進められ、有望な候補材料が発見されつつある一方で、負極の新規探索は十分に行われていない。それに対し本研究では、結晶内に「三次元フレームワーク構造」を持つ酸化物系の負極材料を用いることで、Zero-strainのイオン吸蔵反応を実現し、既存の炭素系および金属系負極を超えるサイクル/高速充放電特性を目指した。本年度は、多電子反応により大容量化が期待できるバナジウム系負極の内、超イオン伝導構造を有するγ相Li3VO4に着目し、結晶相の制御方法およびナノカーボンとの複合化によるMg2+の挿入抜出性能の向上に取り組んだ。まず、超イオン伝導相であるγ相の合成において、5価のバナジウムを4価のチタンで置換することで、通常室温では不安定なγ相結晶を得られることを見出した。また、固相焼成時の冷却速度が速度論的に結晶相を制御することを、クエンチ法によって定量的に明らかにした。ナノカーボンとの複合化については、多層カーボンナノチューブとLi3VO4前駆体を超遠心力場によって高分散化させ、極めて短時間のアニーリングにより良好なナノ複合体(50nm)を得た。このナノLi3VO4/カーボンナノチューブ複合体は、マイクロメートルオーダーのLi3VO4を上回る大きなMg2+吸蔵容量を得ることができた。さらに、in situ XAFSおよびin situ XRD解析から、充電反応時の価数変化・結晶構造変化についての定量的な測定にも成功した。その結果、Mg2+系の反応では、Li+系とは異なるメカニズムで反応が進行することが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初目的としていたMg2+電池系における、Li3VO4/カーボンナノチューブ複合体負極の高い容量発現に成功しただけでなく、in situ XAFSおよびin situ XRDを組み合わせた反応メカニズム解析まで踏み込むことができた。また、超イオン伝導を可能とするγ型結晶相の安定化については、冷却速度と速度論的な結晶相制御の相関を明らかにすることができた。この結果は、査読付きの国際共著論文としてChemistry of Materials誌として採択された。以上のことからおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度はMg2+系におけるLi3VO4の反応メカニズムをLi系と比較し、価数の違いがイオン脱挿入時の結晶変化にどう影響するのかを明らかにする。また、Na+系での脱挿入特性も検証することで、キャリアイオンのサイズと価数が負極特性に与える影響を体系的に明らかにする。さらに、Li3VO4結晶内のイオン伝導度を向上させるアプローチとして、γ型結晶の安定化に加えて、カチオン配列の無秩序化が有効であることも2023年度の予備検討の中で見出しつつある。これらの結晶構造に対するアプローチを適用することで、Mg2+およびNa+電池系におけるさらなる高出力化を目指す予定である。
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