研究課題/領域番号 |
23K19281
|
研究種目 |
研究活動スタート支援
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0601:農芸化学およびその関連分野
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
足立 大宜 京都大学, 農学研究科, 特定研究員 (70980580)
|
研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
|
キーワード | アルコール脱水素酵素 / 酵素電極反応 / 直接電子移動 / 酸化還元酵素 / バイオリアクタ / 生物電気化学 |
研究開始時の研究の概要 |
直接電子移動型酵素電極反応(DET型反応)は,酸化還元酵素を電極反応系に搭載した高機能物質変換系であり,次世代型バイオプロセスへの実装が期待されている.しかし,適用可能なDET型酵素の報告例は少なく,触媒反応の種類に乏しい.そこで,タンパク質計算科学と生物電気化学の融合によるDET型反応の多様化および高機能化を目指す.高いDET活性を示すアルコール脱水素酵素(ADH)をモデル酵素として,従来の酵素工学や電気化学に加え,構造解析や予測技術を導入することで,多角的情報を活用した仮説検証を行う.本検証を経て,ADHの基質特異性・電子移動特性を改変した後,応用展開としてC1バイオ燃料再生系を創出する.
|
研究実績の概要 |
1.基質特異性の改変に繋がる研究成果 酢酸菌由来アルコール脱水素酵素(ADH)とメタノール資化性菌由来メタノール脱水素酵素(MDH)の相同性に注目し,ADHのメタノールへの反応性向上を試みた.申請者がクライオ電子顕微鏡を用いて解明したADHの立体構造(PDB:8GY2)と,既知のMDHの立体構造(PDB:1W6S)を比較したところ,触媒反応部位であるPQQ近傍に位置する4種の残基が,基質特異性および酵素-基質複合体の安定化に寄与していることが示唆された.そこで,当該残基を置換した単独変異体および多重変異体を作製・評価した結果,いずれの変異体も触媒活性を大きく低下させた.したがって,上記残基がADHの基質認識に関与し,触媒残基として機能することが明らかとなった. 2.電気化学特性の改変に繋がる研究成果 ADHの直接電子移動型酵素電極反応(DET型反応)では,複数のヘムcを介して電子移動経路全体に大きな電位差が生じる.そして,本駆動力が高いDET活性の要因であると示唆されている.そこで,ヘムcを減らして経路を短縮したときのDET活性の変化を探るため,3つのヘムcを保有する”Cサブユニット”を欠損した変異体(ΔC_ADH)の作製を試みた.本変異体の発現および精製に成功し,電気化学評価を行った結果,野生型と比較して低いDET活性を確認した.したがって,CサブユニットがADHのDET活性に寄与しているという仮説を実証できた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酵素工学的手法と電気化学的手法を駆使し,ADHの直接電子移動型酵素電極反応(DET型反応)に寄与する構造的特性を解明できた.具体的には,PQQ近傍の残基が触媒活性に必須であることを明らかにしたことで,酵素の機能改変において,部分構造ではなく全体構造に注目しなければならないという指針を得た.また,ΔC_ADHのDET活性を実証したことで,Cサブユニットの重要性に関する知見を得た上に,バイオ燃料のリサイクルに向けた逆反応の実現可能性が大きく高まった.
|
今後の研究の推進方策 |
1.今後は,構造予測ツールであるAlphaFold2を活用し,変異導入が酵素の全体構造に与える影響を評価する.特に,PQQ近傍の基質ポケットの大きさ,およびPQQと触媒残基の距離に着目し,上記ファクターが変動するような変異導入を検討する. 2.今後は,基質とコファクターの式量電位のpH依存性に注目し,速度論と平衡論の両観点からADH変異体の電気化学特性を解析する.また,変異体の構造解析も行い,酵素サイズ縮小が活性や構造に与える影響を評価する.さらに,ΔC_ADHを用いた逆反応(アセトアルデヒドからエタノールへの還元反応)を目指す.また,ヘムc軸配位子であるメチオニン残基の置換変異体を複数作製・評価し,コファクターの電位改変による反応駆動力の向上も目指す.
|