研究課題/領域番号 |
23K19307
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0603:森林圏科学、水圏応用科学およびその関連分野
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
長谷川 悠波 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 助教 (80980937)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | ニホンウナギ / 捕食被食 / 捕食者回避 / 対捕食者行動 / 逃避行動 / 防衛戦術 / 捕食回避戦術 / 捕食者―被食者相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
ニホンウナギは、個体数の激減により絶滅が危惧されており、その資源を回復させることは我が国における喫緊の課題となっている。被食は、生物の個体数に大きく影響を与える要因のひとつであるが、本種の被食回避に関する知見は極めて乏しい。一方で申請者は、本種稚魚が捕食者によって捕獲された後に、エラの隙間を通って脱出できることを明らかにした。しかし、実際に脱出の成否を分ける具体的な要因については未解明である。そこで本研究では、本種の発達段階、および捕食者の種類の違いによる捕獲後の脱出率の変化とその要因を明らかにし、本種の稚魚期の被食回避戦略の解明への貢献を目指す。
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研究実績の概要 |
申請書の実験計画に記載した通り、ウナギの捕食魚の鰓孔からの脱出行動について、2つの実験を並行して進めた。 一つ目は、「複数種の捕食者を用いて、どのような捕食者に対して脱出が有効なのかを検証する実験」である。本実験については、これまでわかっていた丸呑み型の捕食魚ドンコに加えて、新たにスズキ(同じく丸呑み型)からもウナギが捕獲後に脱出可能であることが明らかになった。脱出方向や脱出時間などを比べても、ドンコからの脱出と相違は見られなかった。以上のことから、ウナギの捕獲された後の脱出行動は、丸呑み型の捕食魚に対しては、ある程度有効であることが現時点では考えられる。 2つ目は、「発達段階の異なる本種稚魚を用いて、本種の発達に伴う脱出行動の変化を解明する実験」である。本実験については、本種の発達段階を分類した過去の研究[Fukuda et al. 2013]に基づき、本種稚魚の発達段階を7段階に識別後、捕食魚(ドンコ)に与え、その後の脱出の有無を観察した。実験の結果、来遊直後のシラスウナギ前期の個体は鰓孔から脱出できず、発達の進んだシラスウナギ中期以降の個体のみが脱出が可能なことが分かった。以上のことから、ウナギは河川、河口域への来遊に伴う変態によって捕食魚の鰓孔から脱出が可能になることが示唆された。本成果はすでに4つの学会等で報告し、現在論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「実験①様々な捕食魚に対する脱出行動の有効性の検証実験」に関しては、2年間で5種の捕食魚を用いる予定であった。しかし、捕食魚の入手や飼育、実験下でウナギに攻撃させる手法の難易度が高く、1種(シーバス)のみのデータしか得られていないのが現状である。 「実験②ウナギの発達に伴う脱出行動の変化の解明実験」に関しては、概ね計画通りの進捗状況である。すでに複数の脱出段階のウナギを用いた実験を実施し、興味深い成果を得ている。さらに、夏に米国ワシントン大学のサマースクールに参加し、魚類の遊泳研究の第一線で活躍する Paolo Domenici博士と John Fleng Steffensen博士から本種の突進遊泳力・巡航遊泳力の測定手法については習得済みである。
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今後の研究の推進方策 |
「実験①様々な捕食魚に対する脱出行動の有効性の検証実験」に関しては、研究手法は変えずに、捕食様式の異なる捕食魚(丸呑み型:カサゴ、コイ 噛みつき型:フグ)を用いて実験を行う予定である。 「実験②ウナギの発達に伴う脱出行動の変化の解明実験」に関しては、夏に米国ワシントン大学のサマースクールで習得した、本種の突進遊泳力・巡航遊泳力の測定手法を加えた実験を行う予定である。具体的には、本種の発達段階に加えてこれらの能力を測定後に、捕食魚であるドンコに与え、その後の脱出の有無を観察する。以上の実験により、本種の発達に伴う脱出率の変化とその成否を分けるより具体的な要因の特定を試みる。
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