研究課題/領域番号 |
23K19316
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0604:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
迫田 翠 茨城大学, 農学部, 助教 (70982411)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | メタン / イネ / 根 / 水田 / Azoarcus |
研究開始時の研究の概要 |
水稲栽培は温室効果ガスであるメタンの主要な排出源である。これまでに、土壌細菌Azoarcus sp. KH32C株を接種したイネを水田で栽培すると、メタン生成・消費を担う土壌微生物群集が変動し、メタン排出量が低減することが明らかになった。本研究では、「KH32C株接種は、低メタン排出性の土壌微生物群集を構築するための特徴を持つイネ根を形成させることで、メタン排出を低減する」という仮説に基づき、低メタン排出をもたらすイネ根の特徴を圃場試験により明らかにし、イネへの微生物接種による新たなメタン排出低減メカニズムを実証する。
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研究実績の概要 |
Azoarcus sp. KH32C株のイネ種子への接種がイネ根に及ぼす影響を明らかにするため、KH32C株を発芽後のイネ(日本晴)種子に接種後、育苗し、黒ボク土水田に移植して栽培した。水田は中干しはしなかった。 イネ栽培期間中に2週間に1回程度メタンフラックスを測定したところ、分げつ期と登熟中期において、無接種区よりKH32C株接種区で低下した。イネ栽培期間中に排出されたメタンの積算量を推定したところ、KH32C株接種により約1割低減した。本試験とは異なる水田で行った先行研究と同様に、KH32C株接種によるメタン排出低減効果が示された。 分げつ期、幼穂形成期、登熟中期、収穫期にイネの地上部および根のバイオマス(乾燥重量)を測定したところ、KH32C株接種区と無接種区で同程度だった。また、根活性の指標として、α-ナフチルアミン酸化活性および出液速度を測定した。採取したイネ根のα-ナフチルアミン酸化量は、分げつ期から登熟期まで漸減し、収穫期で増加したが、KH32C株接種区と無接種区で同程度だった。出液速度は、分げつ期から登熟中期で増加する傾向があり、分げつ期および幼穂形成期の出液量は、無接種区よりKH32C株接種区で減少した。以上の結果から、イネ種子へのKH32C株接種は根機能へ影響を及ぼすことが示唆されたが、具体的な効果の検証が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、KH32C株を接種したイネの栽培試験を行って根の量および活性を調査し、KH32C株を接種したイネの根に関する基本的な情報を得た。一方で、2023年度中に行う予定だったイネ根の遺伝子発現量の解析は実施できなかった。また、土壌中の低分子有機物の定量方法の検討も不十分だった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度中に実施できなかったイネ根の遺伝子発現量の解析は、2024年度中に実施する(根試料は採取済み)。また、土壌中の低分子有機物の定量方法の検討を行うのに十分な量の試料は2023年度中に既に採取しているため、早急に検討を進める。 2024年度もKH32C株を接種したイネの栽培試験を行う。根から土壌中に供給される低分子有機物の量・組成に特に着目し、土壌や土壌溶液中の低分子有機物を定量する。また、分子生物学的手法により、メタン生成・酸化や嫌気的有機物分解に関与する微生物群の量や組成の変動を明らかにする。
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