研究課題/領域番号 |
23K19319
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0604:社会経済農学、農業工学およびその関連分野
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
京井 尋佑 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (70982312)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 持続可能な農業 / 窒素問題 / 環境ラベル / 行動変容 / 消費者調査 / 選択型実験 / 消費者行動 / 生産者行動 / 社会的相互作用 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、生産者(農業者)と消費者の双方が、持続可能な農業の達成に貢献する社会の実現を大きな目的とする。そのため、生産者と消費者の間の社会的相互作用により生じる両者の相互信頼関係が、消費者の食生活を低環境負荷型に変化させ、環境配慮型商品の選択を増加させるかを検証し、消費者の変化が生産者の環境配慮型行動を増加させるか検討する。本研究により、生産者と消費者に対して個別にアプローチする従来の農業政策に加え、両者を巻き込む農業政策の提案が期待される。本研究では、実験的に生産者と消費者の間につながりを生み出し、消費者に自らの食生活を見直す機会を設け、また、生産者に自らの農業活動を改善する機会を与える。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、生産者(農業者)と消費者の社会的かかわりにより生じる両者の相互信頼関係が、(1)消費者の環境配慮型食品の選択を増加させるか、そして、(2)生産者の環境配慮型行動を増加させるかを検証することにある。2023年度においては、特に(1)に関連して、全国の一般消費者を対象としたオンライン調査を実施した。調査においては、主として消費者の環境配慮型食品の選択に関する選択型実験を実施した。選択型実験の結果、消費者は概して環境配慮型食品の選択のために追加的な支出を行う意思があることが示唆された。その金額(支払意思額)は、窒素フットプリントを1g-N削減するために4.47円、カーボンフットプリントを1kg-CO2削減するために46.4円、FSC認証のために56.0円であった。カーボンフットプリントやFSC認証と比較して、消費者にとってなじみの薄い窒素フットプリントであったとしても、消費者に対して窒素問題に関する情報を提供することで消費者はその削減のために追加的な支払いをおこなう可能性が示された。また、農業が環境にもたらす負のインパクトに関する知識や農業経験は、消費者の窒素フットプリントに対する支払意思額を有意に増加させる可能性が示された。さらに、複数のフットプリントや環境認証が同時に示されているとき、あるフットプリントに対する消費者の支払意思額が減少する可能性が示唆された。今後、消費者の環境配慮型食品の選択を拡大させるためには、消費者に対する適切な情報提供の仕組みを構築し、様々な環境問題の認識を高め、農業がもたらす環境インパクトに関する認識を浸透させる必要があるだろう。ただし、その際には提供する情報を適切に取捨選択し、消費者の情報処理に過度な負担をかけないような仕組みが必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、消費者調査と生産者調査の両面を実施し、生産者(農業者)と消費者の社会的かかわりにより生じる両者の相互信頼関係が、(1)消費者の環境配慮型食品の選択を増加させるか、そして、(2)生産者の環境配慮型行動を増加させるかを検証する。2023年度においては、消費者調査を実施した。なお、消費者調査により得られた結果は、国際学会での発表および国際学術雑誌への投稿に向けて作業中である。さらに、2024年度実施予定の生産者調査に向けた調整を実施した。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、主に生産者調査を実施する予定である。2023年度に実施した調整より引き続き、調査票の確定と調査対象者(地域)の選定を実施し、両者が確定次第、2024年度の早い段階で調査を実施する。生産者調査においては、生産者の環境配慮型農業に関する認識・知識や農法選択に関する情報など、生産者の環境配慮型行動を促進する政策立案に資する情報を入手する予定である。また、表明選好法による実験を実施し、生産者行動に関する詳細な情報の取得を目指している。さらに、得られた結果を今後の消費者調査へとフィードバックし、生産者と消費者のかかわりを通じた持続可能な農業の実現に資する仕組みの構築を目指す。
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