研究課題/領域番号 |
23K19326
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0605:獣医学、畜産学およびその関連分野
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
板倉 友香里 北海道大学, ワクチン研究開発拠点, 特任助教 (00980856)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 狂犬病 / ウイルス / ワクチン / 人獣共通感染症 / 経口ワクチン / 狂犬病ウイルス |
研究開始時の研究の概要 |
狂犬病は狂犬病ウイルスを原因とし、発症後致死率は100%に達する一方、ワクチンによる発症予防が有効である。ヒト狂犬病の99%は罹患犬による咬傷に由来する。ゆえに、野犬集団における予防対策は、狂犬病による犠牲者の減少だけでなく、根本的な狂犬病撲滅に向けた効果的な戦略である。現行の野生動物用経口ワクチンは感染性ウイルスを使用するため、野犬が生息する市街地への散布が困難である。本課題克服のため、本研究では蛋白質ベースのワクチン抗原をデザインする。消化管環境に耐性を有する原虫構成分子とワクチン抗原の融合より、消化管耐性を付与し、市街地への大規模散布を想定した犬用狂犬病経口ワクチンの開発基盤を確立する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、狂犬病ウイルスG蛋白質を外套したウイルス様粒子に、消化管耐性を有する原虫構成蛋白質を融合させることにより、経口投与による狂犬病ワクチンとしての有効性を評価する。当該年度は、組換え蛋白質として作製した2種類の原虫構成蛋白質をウサギに免疫し、原虫構成蛋白質に対するポリクローナル抗体を作製した。作製した2種類の抗体は、蛍光抗体法、イムノブロッティング法により、それぞれの原虫構成蛋白質を特異的に検出できた。また、2種類の原虫構成蛋白質の恒常発現細胞を樹立し、蛍光抗体法により原虫構成蛋白質が細胞膜上に発現していることを確認した。狂犬病ウイルスの構造蛋白質を発現するプラスミドを、原虫構成蛋白質恒常発現細胞に導入し、ウイルス蛋白質が原虫構成蛋白質と細胞内において共発現すること、さらに、原虫構成蛋白質、ウイルス蛋白質がいずれも培養上清に分泌されることを確認した。ウイルス様粒子の形成を確認するために、培養上清を回収し、ショ糖密度勾配超遠心法による精製を実施した。各ショ糖分画サンプルを、抗狂犬病ウイルスG蛋白質抗体および抗原虫構成蛋白質抗体を用いたサンドイッチELISAにより解析した結果、ウイルス様粒子が分布すると予想されるショ糖40%の付近の分画で陽性シグナルが検出された。したがって、狂犬病ウイルスG蛋白質および原虫構成蛋白質を外套したウイルス様粒子が形成され培養上清中に分泌されていることが確認できた。しかしながら、マウスへの免疫に十分な収量が得られなかったため、大スケールでの発現および発現系の改良に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、原虫構成蛋白質の恒常発現細胞の樹立、原虫構成蛋白質に対する抗体の作製、狂犬病ウイルスG蛋白質および原虫構成蛋白質を外套したウイルス様粒子の発現系の構築、いずれの分子も発現したウイルス様粒子を検出するサンドイッチELISAの構築を完了し、消化管耐性を有するウイルス様粒子をベースとした狂犬病経口ワクチンの構築基盤を確立しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
ウイルス粒子の性状解析およびマウスへの免疫に必要な抗原量を確保するために、大スケールでの発現、現在の発現系の改良、あるいは異なる蛋白質発現系を用いたウイルス様粒子の発現に試みる。ウイルス粒子の性状解析として、pHや温度、凍結融解に対する安定性を評価する。また、ワクチン抗原としての効果を検証するため、ウイルス様粒子をマウスに経口投与し、免疫マウスの血清における抗狂犬病ウイルス中和抗体価を評価する。さらに、免疫したマウスに狂犬病ウイルスを感染させ、感染防御効果を検証する。投与する抗原量や投与のタイミング、回数、アジュバントの必要性を検討し、投与プロトコルの最適化を図る。
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