研究課題/領域番号 |
23K19388
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研究種目 |
研究活動スタート支援
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
0703:個体レベルから集団レベルの生物学と人類学およびその関連分野
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉田 恒太 新潟大学, 脳研究所, 特任教授 (80744606)
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研究期間 (年度) |
2023-08-31 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 種分化 / 染色体進化 / 染色体操作 / 進化 / 線虫 / 染色体 / ゲノム操作 |
研究開始時の研究の概要 |
生物多様性の根本原因である種分化の機構解明のためには、実験的にゲノム変異の種分化に対する効果を検証する系が必要である。私はプリスティオンクス属線虫を使った種分化研究により、種間の生殖的隔離が染色体融合で引き起こされたことを明らかにした。本研究課題では、その染色体融合/開裂を人為的に導入することで、祖先と近縁種の核型を形成し、それが雑種の異常、生殖的隔離を生み出すかを検証する。具体的には、サイト特異的組み替えなどを利用した変異導入により、二種類の新しい核型を作成し、三種間の生殖的隔離や遺伝子制御の違いなどを調べる。これにより、種分化を実験室上で再現し、実験的種分化遺伝学を世界に先駆けて確立する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では近縁種群との解析で、染色体進化が種分化に重要であったことが示されたPristionchus 属線虫において、染色体操作により実際に異なる核型をもつ系統を人工的に作成し、生殖的隔離が実際に生じるのか、を調べ、過去の進化的現象の再現する実験を目指している。具体的にはPristionchus pacificusの過去の染色体融合により生じた一番染色体の染色体融合領域(ChrI21Mb)にテロメア配列を挿入し染色体の開裂を引き起こし、祖先型の核型を作成する。2023年度の半年の期間に、まず染色体操作後の染色体の検鏡を容易にするため、新しい核型解析の手法を開発した。これまで線虫では大量の胚から染色体標本を作成するか、生殖腺を蛍光色素によって染めて、減数分裂期の細胞の染色体数を数えることで個体の一倍体の染色体数(n)を決めていた。これでは2倍体の染色体数(2n)について個体ごとにみることができない。今回の実験で得られるような染色体数が安定せず、ヘテロ個体が現れる系統では、2nの情報は極めて重要である。現在まだプレリミナリーな段階であるが、昆虫などで用いられる乳酸を利用した染色体のスプレッド方法を線虫に応用し、成熟個体から染色体標本を作製することに成功した。これにより2倍体の染色体数を直接観察することができるようになった。 平行して、染色体操作に必要なコンストラクトの作成を進めた。具体的には、テロメアとChrI21Mbとの相同配列をもっているものである。1月に国立遺伝学研究所から新潟大学へ異動したが、スタートアップ経費により、研究設備は整えられたので、概ね予定通り研究は進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テロメア配列のリピートを含むコンストラクトは組み換え酵素を使ったクローニングができないため、時間のかかるクローニング方法でしかコンストラクトを作成できない。そこまでは予想通りではあったが、テロメア配列の大腸菌における有害性が高いのか、さらにクローニングの効率が非常に悪い。現在、色々な手法により、うまくクローニングできるように試している。
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今後の研究の推進方策 |
コンストラクトが作成され次第、CRISPR/Cas9を利用したゲノム編集を行う。現在、予備実験により新しい研究体制でもインジェクションがうまくいくことが確認されているので、準備が整い次第、実験は可能である。これにより、系統が得られれば、掛け合わせ実験により生殖的隔離の観察を行い、生殖的隔離の進化が実際に促進されたのかを確かめる。また、細胞遺伝学的観察による染色体の動態の観察やトランスクリプトーム解析による融合領域の遺伝子発現の変化などを調べ、染色体進化がもつ影響を実際に再現した系統で確かめる。
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