研究実績の概要 |
本研究はシナプス伝達における後シナプス細胞膜内PI(4,5)P2の役割を調べるため、小脳プルキンエ細胞樹状突起スパインのPI(4,5)P2、IP3、およびカルシウムイオンの動態を、PI(4,5)P2や神経伝達物質受容体の分布様式を基に、計算モデルおよびシミュレーションを用いて解明することを目的とする。本年度は、シミュレーションに必要なPI(4,5)P2分子および代謝型グルタミン酸受容体mGluR1αの分布様式のデータを取得するため、研究代表者が先行研究において取得したマウス急性小脳スライスの凍結割断レプリカ標識標本の電子顕微鏡画像(Eguchi et al., 2023)からPI(4,5)P2またはmGluR1α標識金粒子の分布様式(クラスター密度、クラスター内粒子間距離、クラスター間距離など)の再解析を行い、そのデータから神経細胞膜内PI(4,5)P2/mGluR1a分布様式パラメータを推測した。また、他研究グループの先行研究(Hernjak et al., 2005; Brown et al., 2008; Friedhoff et al., 2021)を参考に数理モデルの構築を行い、モンテカルロシミュレーションに進む準備を整えた。 今後は解析したPI(4,5)P2分子の分布様式および構築した数理モデルをシミュレーションツールに組み込むことで、モンテカルロシミュレーションによるIP3/Ca動態の解析を行い、その研究成果を今年度中に論文として発表する予定である。
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